第17話 萌
萌は、母が再婚した後
義父と上手くいかなくて…それに加えて
弟が出来たことで疎外感を感じて…
自分から家を出て、児相に保護された。
萌は、大人しい子だった。
上の先輩に目をつけられないように…
目立たないようにして、ひっそりと生活している…
そんな子だった。
ホームでは、お風呂の時間を決めて
それに従って順番に入っていく。
4~5人は、一度に入れる大きさのお風呂だ。
最初のお風呂の時間は16時半だから…
学校が終わって、門限の17時より早く帰って、お風呂に入らなければいけない。
だから、そこの枠は小学生となる。
小さい学年だと、職員が頭を洗ってあげたりするのだが…
高学年だと…職員は、見守りだけだ。
お風呂から出て、何人かが
「先生、ドライヤーして」
と言って来た…
ドライヤーをしていると…
萌が小さな声で…
「私もドライヤーをして欲しい」
と言った。
「いいよ」
と言って始めたのはいいが…
髪をとかそうとしても、絡まっていてとけない…
萌の髪は、くせ毛だから…絡まりやすいけど…
こんなに絡まっている髪は見たことがなかった…
「萌ちゃん、朝とか髪とかしてる?」
「といてない…」
「そうか…といた方がいいよ」
そう言って…ブラシでとこうとするけど…
萌は
「痛い…イタタタタ」
そうなってしまう…
痛くないように、とかしていると…
「先生、どうしたの?」
2人に理由を話すと…
「うちらも、やってあげる」
そう言ってくれた…
3人がかりで…
萌の髪をとかした。
ちゃんと見てなかった私も、いけなかったと反省した。
「今度から、ちゃんと髪をとかすんだよ」
そう、言って…
時々、気にするようになった。
萌は、母と電話をすることが許されていた。
母は、電話でもしっかり話ができる…しっかりとした印象の人だった。
電話のスケジュールは、職員が決める。
親の事情もあるけど…
それも考慮して、他の人と被らないように曜日と時間を決める
中には、それを守らずに電話をして来る親もいるけど…
萌の母は、それをきっちり守る人だった。
ただ…萌は、あまり電話に出たくない態度だった。
私は、萌の担当になったから
支援計画書を作るのに
今年の目標を聞いたり…
これから、どうしたいかとか…希望を聞く。
萌に、これからどうしたいか聞くと…
「ずっと、ここにいたい」
と言った。
「家に帰りたくないの?」
「帰りたくない…」
そう答えた。
最初は、そう言っていた萌だったけど…
帰省が出来るようになり…
家に帰ることが増えてくると…
母から掛かって来る電話の態度も変わって来た。
明るく電話に出るようになって…
弟とも話をするようになっていった。
年明けになると…
母から電話があり…児相から萌を家に帰してもいいと言われたと
お母さんは嬉しそうに言った。
萌は、中学生になると同時に退園することが決まった。
それから、帰省の時に制服を買いに行ったり…
どんどん退園の準備が進んでいった。
3月、萌は退園した。
次年度になり…
萌の物が出て来たので、連絡をしてみた。
萌の様子を聞いてみると…
元気に登校していて、部活も頑張っていると…
萌が、また戻って来るようなことがなく…
健やかに過ごしていけますように…
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