第16話 菫
菫は、
菫は、桜とも仲良しで、いつも桜と一緒にいて…
桜のことをすごく頼っていた。
施設の併設の学校は、施設の子しかいない。
だから小学校も、1~3年・4~6年が同じクラスになる。
合わない子もいる中で、2人は仲良しだった。
菫の担当にはなったことがないけど…
1年目、菫の担当は、私の同期だった。
菫の誕生日が近かったから…
「菫、誕生日何が欲しいの?もう担当の先生に頼んだ?」
って聞いてみた。
「それが、先生聞いてくれないんだよ」
そう言っていたけど…
誕生日の前日、同期の子はそんなことも忘れて
県外の実家に帰ってしまった。
でも、実家の辺りで買うのかと思っていたけど…
菫に、何が欲しいか聞かれたかと聞くと…
「聞かれてない…」
と寂しそうに言う。
同期の子に連絡を取ると…
「忘れてました…」
と返事がきた。
慌てて、菫に欲しい物を聞き…
上司に承諾して貰って…
夜勤明けで買いに行くことにした。
夜勤の時は、仮眠は取れるから…
5時間くらいは眠れる。
家に帰ると…日曜日だったから
主人がいたので、事情を話した。
主人は、寝不足だから危ないと
連れて行ってくれた。
菫の希望は、好きなアイドルのうちわと…
アイドルの本だった。
アイドルのうちわは、すぐ見つかったけど…
アイドルの本は、なかなか見つからなかった…
施設では、誕生日は施設から…
クリスマスは寄付からプレゼントを買う。
小学生と中学生以上で、金額も違うから
予算内で買わなければいけない…
何件か店を周って、やっと予算内の本を見つけた。
それに付き合わされた、主人が可哀想だったけど
主人も理解してくれた。
翌日…プレゼントを持って勤務に入った。
菫は、すごく喜んでくれた…
「先生に、頼んでよかった。ありがとう」
と言ってくれた…
施設では1年に1回、児相が施設に来て…
子どもと話をする。
困ったことは無いか…
施設の生活はどうか…
話せる職員はいるか…等
菫は、話せる職員はいるか…の質問に、私の名前を出したと聞いた。
それを言う雰囲気の子では無かったから…
すごく嬉しかった…
菫は、中学になると…
身長も伸びて…私を軽く超えてしまった。
姉の桜に続いて…
「先生、うちも耳かきして」
とよく言ってくれた菫…
時々、からかうと
満面の笑みで、はにかみ…
恥かしそうにしていた菫…
里親さんの所に行っていた弟が先に…
そして、1年後に妹も施設に来た。
上の兄と姉以外、7人が施設に勢ぞろいした。
菫は、ここって時に
弟や妹を叱ってくれる…
他の子が悪さをしても叱ってくれる。
それは、職員が怒るよりも効く。
小学生の頃は、幼かったのに
中学生になってから…
本当に、お姉さんらしくなった。
凪と一緒で、もうすぐ高校受験…
菫なら、しっかりしているし…
公立高校に行けるかもしれない。
辞めてしまった私が言うことではないかもしれないけど…
菫なら、大丈夫…
いつか、きょうだい9人と父が揃って
暮らせる日が来ますように…
そして、菫が夢を見つけて
充実した日々を送れますように…
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