第15話 凪

なぎは、出会った時小学5年生だった。



凪は、りんの妹だ。

凪は、凛の妹だから凛以外の先輩も誰も凪を怒ることはない。

だからといって

大きな顔をする子では無かった…



凪は、本心を言わない子…

悩みを職員に言うタイプではなく…

何を考えているのか分からない…



そして、母に対しても冷めている。


他の、きょうだいは母に手紙を書いたり…

母に電話をして欲しいと言ってくるけど

凪は、1回も言って来たことがなかった。



凪が、中学に上がる時

欲しい物があると言ったから



「お母さんに電話して頼んでみたら?」



と言ってみた。



凪は



「どうせ、電話出ないだろうし…いいよ」



と言った。



「電話してみるだけしてみよう」



そう言うと



しぶしぶ…



「いいよ」



私は、電話を掛けたけど…

母は電話に出なかった。



それから、手紙を書いてみようと…

凪と一緒に手紙を書いて送ったけど…



母から音沙汰はなかった。



後で、分かったことだけど…

母は、凛と兄の存在しか

再婚相手に話してなかったのだ。



凪の下には、妹が2人…

その存在を隠して再婚していた。



母は、生活保護を受けており

再婚相手も、事情があるのか仕事をしていなかった。

児相が連絡をしても電話も出ない。

訪問しても出ない…

児相も困っていた。



凪は、冷めた態度を取っていたけど…



もしかしたら…って思いながら

手紙を書いたのに…



母からの返事はなかった。



凛がホームを移ってからも、

凪は、周りに気を遣って生活をしていた。



凪は、どうせずっと施設にいるしかないんでしょ

って感じで、諦めていた。



本当の気持ちは言わないけど…



「ドラマが撮れないから、先生お願い」



そう言って

笑顔で頼んでくる。



そんな笑顔で頼まれると…

嫌とは言えない。



凪は、よく気が付く子で…



「先生、髪切った?」



と一番に言ってくれる。



男子に対しても冷めていて…

みんなが好きな子の話をしても

知らん顔だった。



きょうだいでも、凛とは全然違う。



何につけても冷めている感じだったけど

妹には優しくて…

妹たちを大事にしている、そんな子だった。



毎年、バレンタインデーになると

みんな、チョコを買って

色んな人にプレゼントをする。

この時だけは、女子から男子に渡せる時…

職員も、貰うこともある。



凪は、私にくれたことは無かったけど…

兄に渡す時に、一緒にいたことがある。

凪は、すごく恥ずかしそうに

顔を真っ赤にして…兄に渡していた。

そして、同級生にも友チョコを渡していた。

もしかしたら、その中に好きな人がいたのかもしれないけど…

凪は、絶対に言わない…



凪と凛の兄は、高校2年の終わりに

高校を辞めて、ユーチューバーになると言い出した。

説得したけど、考えは変わらなかった。

兄は、母のところに行きたいと言ったけど

行けるはずもなく…

児相が説明をしたけど…考えは変わらず…

高校を辞めたら施設には居られなくなるから

自立ホームに移った。



そんな兄のことを凪は…



「お兄ちゃんはバカだ」



と言っていた。



そんな、凪も

中学3年生だ…

今年度、受験だけど…

凪は真面目な子だから大丈夫だろう。



おそらく、これからも母の事はあてに出来ない…



どうか…

凪が、自立して生きていけますように…

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