転生


大声で叫んでしまった様だが、幸いジェイドは夜間警備に出ていった様で気づかれずに済んだ。

「……MOEの世界に転生したのか。…………往年の名カード、対空射撃の人に会えるなんてたまらない。」

 MOE――Masterマスター ofオブ Elementエレメントのファンもとい、カードゲームオタクとして感動に震える。

「……しかし、異世界転生として考えると……オッサンと二人暮らしだから微妙か?……しかし、ジェイドって言うのか。……ネームドキャラじゃないから知らなかった。だが、渋くて……カッコいい――」

 一般オタク的には、美少女幼馴染がいない現状を悔しがるべきなのだろうが、カードオタクの喜びが勝る。感極まって情緒が追いつかない。

「……とりあえず、お約束だがステータスでも見るか。ステータスオープン……違うか……プロパティ――スキル――表示――開示――ひらけ――」

 異世界転生モノのお約束のステータスを確認しようとしたが、中々開かない。無いのだろうか?いや、此処がMOEの世界なら――

 「ハアハア……スタンバイ……フェイズ……アビリティ……チェック」

 目を閉じてそう唱えるとステータスが表示された。そう此処は、カードゲームの世界だった……


 ステータス

 地属性

 1マナ

 見習い冒険者

 攻撃力  1 (53/100)

 防御力  1 (23/100)

 スキル

 ・隠密  1 (80/100)

 ・錬金術 1 (00/100)

 ・捕獲  1 (00/100)

 ・両手剣 1 (00/100)

 ・魔石術 1 (00/100)

 ・解析  1 (00/100)

 ・叡智  1 (00/100)

 ・契約  1 (00/100)



「やった。錬金術を習得してる。」

 俺の中のアレクが叫ぶ。……落ち着けアレク……夜中だから……自分を棚に上げてアレクを嗜める。

「元々、持ってたスキルは隠密だけだよなぁ……叡智の書の力か……ドロー=スキル獲得なのか?……でもスキル多くない?……普通は1ドロー辺り、スキル1つじゃないのか?」

 まぁ、多い分にはお得だからいいか。明日はギルドに行って、スキルの詳細を確認をしよう。

 しかし、見習い冒険者か……やっぱり、コモンのモブキャラだったか……本音を言えば、有名なユニークキャラになってみたかったが……まぁ、有名ユニークキャラはその分過酷だから、気楽な転生異世界ファンタジーを楽しむのには丁度いい。

「……何か忘れてる様な……」

 その疑問は微睡の中に沈んでいった。

 

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