叡智の書


……ゴブリンを倒したら、スキルブックがドロップ……し……

 うーん……寝てた……

「なんだ……変な夢をみたな……」

 ダンジョンでうたた寝していた少年が呟く。ダンジョンと言っても、カニグモしか出ない代物で、危険度は0、ダンジョンと呼べるかと言われるとかなり怪しい。とは言え、侵入してきたはぐれのゴブリンとかと遭遇する可能性もあり、事実、午前中にはカニグモを襲うゴブリンを狩った所であった。

「ゴブリンを倒したら、スキルブックが出た様な気がしたんだけど、……夢か……ジェイドにバレたら怒られる。」

 いくら何でも油断しすぎである。そのくらい安全だから、ソロで子供が潜れている訳だが……

「カニグモから糸集めて帰るか。お前達糸吐いてくれ」

 カニグモの糸を棒に巻きつけ、5本目になった所で帰る事にする。カニグモ達はいつも通りに糸を吐いて、今日の仕事は終わり、ゴブリンの死体から魔石だけを回収して、ギルドの方に帰った。

「カニグモの糸を4本納品ですね。裁縫用が2本、釣り用が2本で小銀貨5枚になります。後、依頼として弓用があるのですが……」

 寂れた山奥には相応しくない。若く美しい受付嬢が困った様に告げる。

「弓ってジェイドの依頼です?持ってるから依頼取り下げでお願いします。」

「はい、承りました。……ジェイド隊長の不器用さには困ったものです。」

 受付嬢のエリサは微笑みながら、依頼書を破棄する。

「じゃあ帰ります。さようなら。」

「アレク君、お疲れ様。」

 家に帰ると一人の男がアレクを出迎えた。

「……遅かったな。アレク……」

「ただいま。ジェイド」

 彼はアレクの叔父で同居人のジェイドだ。訳あって今は二人暮らしをしている。

「……おかえり。……肉が焼けてる。」

 焼けた鳥の半身をテーブルに置くと自室に戻っていった。まだ、日は暮れてないが、夜警があるから今から寝るのだろう。彼の鞄にカニグモの糸を入れて、夕食としよう。

「……今日は疲れたから、ご飯を食べたらさっさと寝よう」

 鳥は暖かく、シンプルな塩味だけの味付けだったが美味かった。

「……夢だったのかな……スキルブック……」

 まぁ、そんなに簡単に手に入るものじゃないが、リアルな夢だったから、落胆が大きい。……寝て忘れよう。

 …………自室に戻ると疲労感かすぐに眠りについた。

 (……ジェイドって……熟練弓兵に似てるな…………熟練弓兵って何だっけ?……対空射撃の……イラストのアンコモンキャラだった……か?……スキルブックってのは叡智の書か…………何の知識だ……コレ……?)

「オレ……転生してる!?」

 

 

 

 

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