第2話 出会い

朝の通学時、学校の廊下で一人の生徒とスレ違う。


「おはようございまぁすぅ…」


「おはようございます。」


すれ違い時、小さい声で生徒の一人である田中ひとみは挨拶をした。


その声にハキはない、顔はうつむき加減だ。

以前は明るく元気な生徒だったのだが…。


担任である平ゆうじ(たいら ゆうじ)は

女子高の国語教師であり3年1組の担任を受け持っていた。


50代前半で体系は瘦せ型、白髪交じりの短髪、眼鏡をかけている。


以前起こった出来事だが、ゆうじが受け持つクラスでは女子生徒同士で

争いが起きた。


「ふざけんじゃねぇよ」


それはある国語の授業の時、国分ひろこ(くにぶ ひろこ)は声を荒げた。


「んだよっ、もう知らねぇ。」


何やらA4程のくちゃくちゃの紙を丸め、ゆうじに向けて投げてきた。


「えっ…どうしたんですか」


と弱弱しい声でゆうじは問いかけた。


「はぁなんで怒んねぇんだよ、ふざけんな」


ゆうじの反応に何故か腹が立ち、ひろこは教室をでていく。


ひろこが出て行った後、


「ほんとあいつってムカつくよね。」

「うんマジ最悪。」

と声が聞こえる。


「はっお前ひろこに何したんだよ。」

と金田ありす(かねだ ありす)は言った。


「しらない。」

と木城れいか(きしろ れいか)はうつむき加減で言った。


ゆうじは紙を拾いあげ、くしゃくしゃに丸まった紙を

破れないように慎重にに広げた。

中にはカエレよと大きく書いてあった。

ゆうじは黙って折りたたむ。


「誰が書いたんですか。」

生徒に向かって問いかけた。


誰も声を上げる事が無いと思ったその時


れいかが声を上げた。


「私この子が書いているの見ました。」

と隣の席の田中ひとみを指さした。


ひとみはドキッとしれいかを見る。


「え、私じゃないよ、私は書いてません」

「だってなんか書いてたじゃん。」

「書いてないよ。」

険悪なムードが漂う。


「まぁ落ち着いてください。」

「とにかく国分さんが心配です。」

「私が探してきますので自習していてください。」


ゆうじは黒板に自習と書くと教室を後にした。


「すみません生徒が通りませんでしたか」


掃除のおばちゃんに声を掛けた。


「いや今来たばかりなので見てないです」

「そうですか…ありがとうございます」


しばらく校舎を探し回ったが見つからず。

とりあえずゆうじは親御さんに連絡して教室に戻る。


戻ると、ある一定の生徒は机に座り自習をしていたが

他の何名かの生徒は椅子を移動させてクラスメイト同士

あーだこーだ先ほどの件をしゃべっていた。


この事件がきっかけにクラスの治安が悪くなり真面目な生徒は

休むようになった。


何故かゆうじに対する無視や嫌がらせやいたずらが

横行していきクラスは学級崩壊状態だった。


ひろこはあれ以来学校に来なくなっていた。


ゆうじの靴の中に画びょうが入っていたことがあり足に刺さった。

それ以来はかなりいたずらに敏感になり些細な事でも過敏になっていった。

ゆうじは徐々にヤツれて行き学校に行くのも億劫(おっくう)になっていた。


ある日の帰り橋の柵に腕をかけ川をぼんやり眺めていた。


頭の中で最近の嫌な事ばかりが回想されていた、無視されている事、イタズラ等々

学校内でのあらぬ噂、援助交際しているだのしていないだの。


誰が噂をながしているのか、先生同士でも噂は広がっていた。


通りすがりに女性教員に気持ち悪い、と言われる事が何度かあり

何もしていないのになんで私がこんな目に合わなければならないのか

頭の中はマイナスの事ばかりが終止回想されており、ゆうじの心をむしばめていた。


「もういいかなぁ」

ゆうじは柵をつかんで反対側に立った。


ゆうじの頭の片隅にうっすらと光る何かが映り込んだ、気のせいかと思った瞬間

頭の中にすさまじい光が入り込んできた。


「おいっまだ死ぬんじゃない。」

「へっ」


頭の中で凄まじい光が起こった後、目を開けると横から声が聞こえた。

しかし首を横に動かすが誰もおらず、なんだか肩に黒い影が見えた。


「こっちだよっ。」


耳元で悲鳴のような大声が聞こえた。

あまりの声の大きさに耳を塞ぐ。


「おい耳塞ぐんじゃないっ。」


ゆうじは深呼吸をして落ち着くと改めて自分の肩を確認した。


肩の上に仙人の様な恰好をしたハゲ頭の

おじさんがなにやら飛び跳ねていた。


ゆうじは驚きのあまり声が出なかった。












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