第19話、チャクニン
場所は、大きめの会議室。
前には、女性用の軍の礼服を着た、メルル―テ大佐。
他、基地の司令官などが並んでいる。
「命ずる、レンマ空軍、教導部所属、『イオリ・ミナト』少尉~」
「砂上飛行艇、『イザナミ』の搭乗者、並びに
「アールヴ海軍所属、『ファラク・シャリー・アールヴ』中尉と、熱砂に出向~」
「
イオリは、横に並んで立った女性をちらりと見た。
砂漠の砂の色をした軍の礼服。
タイトスカート。
黒髪に、青い目、褐色の肌、銀色の魔紋。
頭には、角ばったベレー帽。
ベレー帽には、アールヴ軍の徽章である『デザートイーグル』
ファラクだ。
「はっ」
イオリは、大声を出して敬礼した。
◆
着任式が終わった。
「え~と、中尉?」
イオリが、軍の礼服姿のファラクに聞いた。
「そうよ~、『イザナミ』は軍用機だもの~」
ファラクは、悪戯が成功したような顔をしている。
「……名前にアールヴ……?」
「……王女様なの……?」
イオリは驚いた表情で聞いた。
「アールヴ王家のハーレム出身よ~」
「上から十七番目だけどね~」
ファラクは、ピンク色の舌をちらりと出した。
「??、ファラク中尉?、ファラク王女?、ファラク殿下??」
イオリが混乱している。
「あはは、今まで通りファラクでいいわよ~」
「まだ下に十人くらいハーレム出身の王女はいるもの」
「中尉と言っても、技術中尉だし」
船巫女に関する技術供与だ。
ハーレムから軍に臨時で参加しているようなものである。
「それよか、次は船主になるための、”ケイヤクノギ”よ」
「……”イザナミ(わたし)”の船主になるのでいいの……?」
「いいよっ」
イオリは、力強くうなづいた。
◆
着任式が行われているその頃、
「ぐふふ、これです」
クルックと感じの悪い上官が、基地の格納庫に来ていた。
二人の前には、シートに覆われた飛行艇があった。
垂直尾翼がない。
「あのような、砂漠の卑しい身分の女は必要ないんです」
上官の目つきがおかしい。
「……お前……」
クルックは、ファラクの本当の身分を知っている。
飛行中に話をしたのだ。
バサア
上官がシートを外した。
「イザナミ……じゃない」
「ぐふ、”ヨモツヒラサカ”ですよ」
形は『イザナミ』とおなじだ。
しかし、
機首と機体上部中央に、真っ黒い『一つ目』の魔紋が二つ。
機体の横には、小さな『一つ目』の魔紋が二つ、左右計四つ。
それぞれの目には、唇のある小さな口がそれぞれついていた。
その周りを黒くて禍々しい線がのたうつ。
「目……か……」
ギョロリッ
「ぐっ」
クルックは、魔紋の目が一斉にこちらを見たような気がした。
「エンバー伯爵様の命令です。 今夜出ますよ」
「……ああ」
クルックは、魔紋からしばらく目が離せなかった。
その日の夜、クルックと上官は、『ヨモツヒラサカ』で、基地から失踪した。
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