第13話 因縁 決着はイリーガル
ある昼下がりのこと。
「だって、俺が動けなきゃお前らは誰が…!」
「安静にしたまえよ葵ィ!」
いつも通りの一悶着をする葵と慈亞の間に、倫悟が割って入る。「すみません、宰苑さんに話があるので、奥の部屋で話しませんか?…安心してください。何かあったときは、僕が。」
倫悟と慈亞は、普段スーツや武器の製作を行っている部屋に入っていった。
慈亞驚いたような声で「私がァ!?」とか「君のォ!?」と言っていたのは聞き取れたが、それ以外はなんとも。ヘリアススーツの修理は完了したようだし、あとは体さえ治ればいつでも戦える…そう確信していたが、現実はそう甘くはなかった。
ヘリアスがいなくなった代わりにソートルとコルブが怪人と戦って、2週間。頭の傷は完全に塞がり、復職。やっと満足に戦えるようになった。
***
「慈亞と謙飛くんは、倫悟くんに任せるよ。」葵はとある殺人事件の裁判で、証拠の矛盾から被疑者の潔白を証明するという大きな案件を受け持っていたのだ。
かつての自分と同じく、高校生の少年にかけられた親殺しの冤罪。
決して負けることはない確固たる証拠を見つけ、そしてそれ以外多くの事件の判決すら覆すような証拠も手に入れた。
完璧な自信に満ち溢れながら、裁判所の中へと入っていく。
葵が法廷に立ってまず目にしたのは、クスリと笑う、メガネをかけた女。臙脂色のパンツスーツに身を包み、胸には秋霜烈日が輝く姿を見て疑惑は確信に変わった。間違いない。あれがあの蜘蛛怪人の正体、
数々の難事件を担当してトリックを暴いてきたエリート検事だが、裏の顔が殺人鬼だなどとは誰も思うまい。
検察官立証が始まると、何食わぬ顔で話し始めた。つい先日自分が命を追い詰めた相手が目の前にいるのに、異常なまでの平常心である。しかし43歳とは思えない風貌だ。10歳下の芸能人の中に並んでいても違和感はないだろう。
これも怪人化の影響なのだろうか。
弁護側立証に移る。証拠を提示した瞬間、糸川の顔が曇った。映し出されたのは、検察側のものにはない監視カメラの映像。蜘蛛怪人が男性に襲いかかるところまではっきりと映し出されている。
「この映像に映っている男性の特徴、まさに被害男性そのものですが…加害者は明らかに『蜘蛛の怪人』としか言いようがない……その上、この蜘蛛怪人が来ているスーツ、ボタンの位置から見てレディースのものなので、『被告が怪人になって襲った』という可能性は非常に低いでしょう」
葵の言葉に法廷がどよめいた。それもそのはず。このような裁判において、怪人の可能性が示唆されたことなど史上初なのだ。
「ところでこれは、糸川検事のスーツ発注修理履歴、そして直近の猟奇殺人事件の日付。これは私が集めた証拠ですが…どうでしょう?事件発生の2日以内に注文しているのがわかるでしょうか」
糸川はこめかみに青筋を浮かばせながら、根拠として薄いとの反論をする。
「そうですか……では、この映像にはどう反論されるのでしょうか…」
先ほどと同じ日付の監視カメラ映像、そこには、糸川がスーツの腿部分を裂きながら蜘蛛怪人へと変貌する姿が映し出されていた。
「そう、糸川検事…あなたはこうして、自分の起こした事件の犯人を他人に仕立て上げ、起訴した。しかも常習的にです!」
「そして、これら6件全て…さらに私の両親と、恩師である中田弁護士が殺害された2件についても…担当した検事はあなたです」
あの夜の事件にて葵が残した証言で、人型の蜘蛛のような怪物を見たと記された調書がある。これは恐怖心が生み出した幻覚としてまともに取り合ってもらえなかったが、全ては今につながっていたのだ。
「人々の平穏な暮らしを支える検事が、こんな事件を起こしてるなんてことがあっていいのでしょうかねぇ…?」
葵が糸川の方を見ると、込み上げる怒りが爆ぜたようだった。
「っなによその映像!デタラメに決まってるじゃない!名誉毀損で訴訟してやってもいいのよ!?」そう叫びながら、激昂した糸川は蜘蛛怪人へと変貌する。
「これが何よりの証拠なんですが…皆さん、逃げて!俺は最後に出ます!」
避難誘導した葵は、蜘蛛怪人と化した糸川に問いかける。
「糸川…お前は俺に固執しているが、一体何が目的なんだ!?」
「目的ぃ…?はて、何のことやら……でもぉ、葵くんの恐怖に歪む顔が好き…♡だからかなぁ?」あまりにもふざけた調子で答えられ、葵は怒りと共に恐怖を覚える。
そんな理由で自分の周りの人を惨たらしく殺してきたというのか。しかも、慈亞たちまで手にかけようとして。
「そうそう、その顔〜♡この間お家でも泣きながら怒ってたわよね?本当にカワイイ…♡」さらに挑発する蜘蛛怪人の顔面に、葵の投げつけた仮面がぶつかる。「あの時も見ていやがったのか……変身!」跳ね返ったそれが葵の顔に装着される瞬間、南側の磨りガラス窓が粉砕された。
外に置いてあった葵のバイク内に格納されているマテリアルボックスからヘリアスの装甲、レオネアーマーが飛来したのだ。L77アストラル光子によって誘引され、相互特殊電磁接続で固定される。全て、蜘蛛怪人を倒すために慈亞が開発した最先端技術だ。
「これまでの分、しっかりお返しさせてもらうぜ…!」
太陽を背負う戦士ヘリアスが、雄々しく法廷に立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます