第10話 転生のその後
俺は、階段から転げ落ちる。
じわじわと痛みが襲ってくる。
痛みに悶えながら俺はボイスレコーダーを確認した。
…大丈夫だ…壊れていない…
霞む目に抗いながらも階段の上に目線を移す。
そこにはもう誰もいなかった…
階段を降りてくる音がする…
誰かが叫ぶ。
「きっ救急車!!!」
そこからの記憶はない…
目を覚ますとベッドに寝かされていた。
真っ白な天上をしばし見つめた後、頭を動かすとそこには両親が立っていた。
母は、目に涙をため。俺と目が合うと顔にハンカチを当て、泣いていた。
父は、こらえるように唇を噛んだ後、俺に語りかけた。
「父さんと母さんが来るまで部長さんが見てくれていたよ。
…それから…警察の人からも事情を聞きたいと言われてね。
凪斗。お前がなんでこんな事になっているのか聞いたよ。」
母は、ハンカチで顔を押さえながら声を殺し泣いていた。
父は、俺の手を握った。
「…おまえ…こんなに細くなるまで頑張って…」
俺は、少し体を起こそうとするが体がうまく動かない。
俺はポスッと枕に頭を預けた。
何だコレ。
痛みが強すぎて力がうまく入らない。
「脳や骨には損傷はないと言われたが…全身痣だらけだと…」
「…俺はいつまで入院しなきゃいけないんだ…」
俺は、病院の天井を見つめながら両親へ声をかけた。
「とりあえず、明日もう一度精密検査と警察の人が来て事情聴取があるから…
自由になれるのはまだ先だろうな…」
俺は、天井を見つめながらかすれた声で返事をした。
「凪斗さんのお父さん、お母さん。先生がお呼びですので…」
看護師が両親を呼びに来た。両親は、
「退院するとき、警察へ行くとき。迎えに来るから。」
そう言って病室からでていった。
俺はまた、天上を見つめた。
深く息を吐く。
病室には俺一人。個室が用意されたようだった。
これからって時に…俺は…
ふと思い出した。
あれ。俺の上着…どこ行った…
俺は、ガバっとベッドから起き上がった。
多少痛むがそれどころではなかった。
まて。まじか。上着…どこ行った…?
俺は、ベッドに置かれたケースやら親が持ってきてくれたカバンなど開けた。
無くした?警察にもっていかれた??
嘘だと言ってくれ!
俺は必死に探した。
最後にベッドの隣にあった棚の上を探した。
「…あった……焦ったぁ……」
俺は、上着のポケットを見る。そこにはボイスレコーダーが残っていた。
音声は大丈夫か?…スイッチを押して再生する。
…大丈夫だ…
俺は、ボイスレコーダーにイヤホンを挿してから音を聞いた。
今日の録音の中に犯人の音声は入っているだろうか…
俺は、カバンからノートパソコンを出し、文字起こしをしながら録音を聞く。
静かな部屋にキーボードを打つ音が響く。
散々聞いたが、有力な物はでてこなかった。
コンコン
扉のほうからノックする音が聞こえた。
俺は慎重にノートパソコンとボイスレコーダーをカバンにしまい、返事をした。
スーツを着た男たちが数人入ってきた。
「お怪我をされ、大変な所。すみません…高橋県警の者です。事故…事件当時のことを詳しく話していただけませんか?」
俺は、ゆっくり頷いた。
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