第27話【珍獣はかく語りき ③大原家全員集合】
母上と玲と話しよったら、玄関から『たでーまー』とかいうヘンテコで、ごっつデカい声が響いてきた。
声の主は、さっき言うとった妹の桜らしい。
この子もまた失礼なやっちゃでなぁ。初対面のわしに向かって『クサいクサイ』って連呼しよんねん。
でもな、ちょっと笑ってしもたんが、桜が帰ってきて一発目に言い放った『クサっ!』の対象物が、玲の靴やったっちゅーのんにはウケたな!
でや。桜はわしの姿を見るなり『チョー可愛い~』って騒ぎ出したんや。まぁ当然のリアクションやな。ふっふーん。
けど、なんや会話が噛み合わへんなぁと思っとったら、どうやら、わしのことを喋るぬいぐるみか何かやと勘違いしとったみたいやねん。
事情を知らんとはいえ、ちょっと臭うからって、いきなり洗濯機にブチ込もうとしよったんやで! ホンマ怖い子やわ……。
自己紹介してやったら、急にわしを『銀ちゃん』とかヘンテコなあだ名で呼び出したんや。そんな呼ばれ方したことなかったから、ちょっと戸惑ってしもたわ。
さらに驚いたんが、急に母上まで同じく銀ちゃん呼びに変わりだしたんよ。さっきまで包丁持って『怪獣やー!』とか言うてビビり散らかしてた人と同一人物とは思えんでな。
でな、桜がわしに変なあだ名つけよったから、わしもお返しで「桜っこ」って呼ぶことにしたんや。ま、まぁ別に銀ちゃんとか呼ばれて嫌やったとかではないんやで? いや、ホンマやで?
動物園では、ごく一部の人間としか関わってこーへんかったから知らんかったんやけど、人間の姉妹いうのは全然似ぃひんもんなんやなぁ。
玲曰く、世の中にはよく似た兄弟姉妹もおるらしけど、玲と桜っこは全くもって真逆やな。性格も、雰囲気も。初めて知ることばっかりで、なんか面白かったわ。
そんな違いも初めて知ったから、なんかオモロいなぁ~って感じた。
母上から、わしは何食うんやって質問されたから、ユーカリやでって答えたんや。当面の食糧は、わしが入ってた段ボールの中に入っとるから安心せぇ言うたら『じゃあ、今晩はユーカリ炒めにしましょう』とか言い出しよった。
「ユーカリには毒があるから食べんとき」って真面目に言うたら『そこは、おっええなぁ~うまそうやの~くらいのノリ突っ込みしてこなきゃ』とかいうよぉ分からん返しされた。なんじゃそりゃ……。
そういや、玲がさっき言ってたな。母上は、たまにウザイ絡みしてくるって。あぁ、これかって合点がいったわ。
とまぁ、なんやかんやあって、わしと桜っこが風呂に入ることになった。
まだわしの事を喋る機械仕掛けのぬいぐるみやと勘違いしてる桜っこに、冗談で「機械かどうか、わしの体の確認するか~」って言うたら、ホンマにわしの全身を
結局、どこにも仕掛けがないのが分かって、ようやく本物やって理解したみたいやけど……驚くの、遅いわっ!
わし、風呂は割と好きやねん。でも熱いお湯は苦手や。せやから先にぬるめでって注文しといたのに、熱々のお湯かけてきたから、ちょっと怒ってもうた。
ほしたら、桜っこの奴が『毛が邪魔なんじゃない?』とか言い出すもんやから「わしの最高級毛皮を刈るなよ」って言い返した。そしたら『いくらで売れるかなぁ?』やと。この娘は何を言い出すんや、全く……。
桜っこならホンマに勝手に刈りだしかねへんから、冗談やと分かってても、めっさ必死に「売るなよ!」って突っ込んでもたわ。
風呂から上がったら、今度は玲や。風呂上りのわしを人目見て『濡れ銀ちゃんウケる~』とか言い出しよる始末や。どないなってんねん、この家の娘らは……。
玲に体乾かしてもろたんやが、これがなかなかに上手でな。初めてとは思えんくらい手慣れてて、気持ち良ぉてうっとりしてもうたわ~。
久々の風呂を満喫した矢先、桜っこがまた「モフモフいただきま〜す」とか言うて襲いかかってきてな。わしは食べもんちゃうっちゅうねん!
その攻撃をなんとかかいくぐってたら、玄関の扉が開いて、父上が帰ってきた。
どうやら、事前にわしの話は聞いてたらしく『例のコアラはどこにいるんだ~』とか呑気な感じで言いながら、周りをキョロキョロ探し出しとったな。
当のわしはと言えば、桜っこの魔の手から逃れて父上の足元におったから、「ここやで」って声かけたった。そしたら、めっちゃ大きい声で『うわぁ!』言いよった。びっくりするんはこっちの方や!
ちょいと立ち上がるのに、父上の足を拝借しつつ、「これから宜しゅうに」って挨拶した。
これで大原家が全員集合した訳やな。
なんやちょっと頼りなさそうやけど優しそうな父上。愛嬌たっぷりやが、時々絡みがめんどくさい母上。しっかり者で大人しそうな感じやが、ちょいちょい強めの突っ込みいれてくる玲。元気いっぱい、おてんばな桜っこ。そして、そして可愛さMAXの珍獣……やなくて、コアラのわし。みんなキャラ濃いなぁ~。
とにかく、今日から四人と一匹家族や!
動物園での生活から、まさかの一般家庭暮らし。どんな毎日が始まるんやろな。
ちょっと不安もあるけど、この家族なら……たぶん、いや、きっと楽しい毎日になるんちゃうかな。
そんな予感がしてるんや。それが間違ってないといいんやがな……。
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