第28話【珍獣はかく語りき ④お留守番】

 大原家に来た夜、初めて人間と一緒に飯を食った。

 みんなはオムライスとかいう料理を食うてたわ。わしは、言うまでもなくユーカリよ。

 食事の時間は賑やかでなぁ、父上がギャーギャー騒いだあげく、服に赤いシミをつけて母上に怒られとった。

 どうやらこの家の階級は、母上が一番上みたいやわ。

 人間の家族は、父親が一番偉いんやと思い込んでたけど、実際はそうでなかったんやな。動物界でも、メスが一番偉なることも珍しくはないか。


 わしと暮らしていくに差し当たって、この家に必要なものが全然ないらしい。

せやから明日、玲たちが買い物に行ってきてくれるらしいわ。助かるなぁ。

 動物園で見たことがある人も多いと思うが、コアラは基本、木の上で生活している。

 寝る時も、もちろん木の上や。でも、この家には当然それがないわけやが、贅沢は言われへんよな。

 今夜はソファとかいう場所で寝かせてもらうことになった。まぁこれはこれでアリかな?


 買い物のリクエストを聞かれたけど、パッと思いつく物はなかった。

強いて言えば、やっぱり慣れた寝方ができる何かがあれば嬉しいかな、って言うといた。

 今後も、わしのために色々気を遣って、物買ってもろたり、世話してもろたりすんの、ちょっと気が引けるなぁ……。

 


 大原家に来て初めての夜。

 いつもと違う環境やから、全然寝つかれへんかった……って言ってみたかっただけ。ホンマは秒で寝た。

 ゴロ寝も意外と悪くないなぁ、って初めて気づいたわ。こう言うのを『怪我の功名』言うんやな。知らんけど。



 翌朝、みんなが出かける準備をしているのを観察してたけど、人間って忙しい生き物やなぁと改めて思ったわ。

忙しいのは分かるけど、みんなわしのことを見て『銀ちゃんおはよう』って言うだけで、出かける支度に必死やったな。

 わしのことを、まるでずっと前からいるペットみたいに思ってくれてるんかもやけど……対応力、早ない!?


 家から最後に出たんは、母上やった。

出かける前、申し訳なさそうに『ごめんねー』って言っとったけど、わしのことは気にせず、普段通りにしてやーって伝えといた。

実際そうしてもらうんが、わしにとっても一番有難いからな。



 みんなが出かけて、部屋には静寂だけが残った。

 昨日までとは全く違う景色がそこには広がっていた。

 昨日はリビングとお風呂とトイレしか行ってないから、暇やしちょっと大原家を探検しよう。


 まずはリビングを一周。玲や桜のおめかしした、ちいちゃい時の写真が飾られてあった。

 二人の写真を見比べてみると、ポーズの取り方をとっても、玲はおしとやかで、桜は大胆なポーズを取っている。写真を見ただけでも、この姉妹の性格の違いがよく分かって面白いなぁと思た。


 次にテレビいうのんをちょっといじってみた。

 昨日、父上がリモコンとかいう黒い細長いやつ触ってたのを、見様見真似でやってみたら、なんかちゃんと点いたわ。

 内容は帽子かぶった眼鏡のおっちゃんが街をブラブラして、変わったことしとる人を捕まえてイジるみたいな話やった。なんやオモロかった。明日も観よかな。


 次は各自のお部屋に……て思たけど、さすがに勝手に入るんはよぉないなと思ったから、今回はやめて寝ることにした。今度ちゃんと許可取ったら、色々見せてもらお。


 コアラの一日の就寝時間は、約二十時間と言われてるらしい。わしはそこまで寝ぇへんけどな。でも今日はやることがないさかい、結局テレビ観てからは、ずっとおねんねタイムやった。『たでーまー』とかいう、けったいな大声が聞こえてくるまでな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

懸賞に応募したら珍獣が当たったんだが 林りりさ @rilysa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画