第14話 成長と別れ

 時間が過ぎるのはあっと言う間だね。


 僕とシドとレンの3人で過ごした日々は、レンの成長と共に様々な出来事に彩られていった。一緒に勉強をしたり、一人では出来なかった剣術の稽古をしたり、シドとレンと狩りに行ったり。


 そんな中、レンが独り立ちをする為、森を出る事になった。偶にここへ来る人達と話をする度に、街にへ行ってみたい気持ちが、どんどん大きくなったんだって。


 レンが行ってしまうのはとても寂しい。


 でも、僕がレンの自由を奪う事は出来ない。


 だから僕は『何時でも戻って良いからね』と言って、レンを送り出した。過保護かもしれないけど、森の外れまで見送りしてしまった。


「ソラ………今までありがとう。小さかった俺を大切に育ててくれて。……街で頑張って、いつか恩返しに行くから待っててよ!」

「………レン。気を付けて行くんだよ?街は…人は、たくさんの思惑と誘惑に溢れているからね。僕は、君が幸せだったら恩返しなんて要らない。元気で…ね……」


 手を振って遠ざかるレンの姿が霞む。


 久しぶりに涙が出て溢れて来た。


 僕を労る様に、シドが何度も身体を擦り寄せてる。


「………シドありがとう。お別れは寂しいね。でもレンの人生だ。僕達はレンの幸せを願っていよう……」

「グルッゥ…」


 シドの頭を撫でて、僕達はまた森の中へと帰って行く。


 しょうが無いことだ。

 何時までも一緒にはいられない。


 だって、レンと僕達とは時間の流れ方が違うみたいなんだ。


 日々成長するレンに比べて、僕とシドはそれがゆっくりなのか、あっと言う間にレンの方が大人っぽくなってしまったんだ。


 それに僕は街に住みたいとは思わなかった。


 シドとこうして過ごすのに慣れてしまったからかも知れない。前よりは薄れたけど、未だに嫌だなと思う人が僕の家にやって来ると、お母さんを思い出すんだ。


 こう言う記憶は、大人になったら無くなるんじゃないかな?って考えは甘かったね。

 でも、シドやレンと過ごした日々は、楽しい事も大変な事も含めて嫌いではなかった。


 元々、僕は何かが足りないんだろうね。


 人を好きになる気持ちが分からない人間なのかも知れないな。


 それでもシドとレンは大事にして来た……つもりだ。それが伝わって無かったら寂しい。

 僕の独りよがりじゃ無い……と思う…たぶん。


 こう言う事って、直接本人に聞くのが正しいの……?よく分からないや。


 いつか、また森の家にレンが来てくれたら聞いてみよう。


 帰って来てくれるかな?


 来てくれたら嬉しい。



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