第15話 夢

 こうしてまたシドと僕の2人の生活に戻った。


 いつもの日常を送りながらも、僕は自分の気持ちが分からずに、モヤモヤしていたみたい。

 だから神様に会った時みたいな、変な夢を見たんだ。嫌な……意地悪な夢だった。




◇ ◇ ◇




『街に行きたい?』

 行きたくないよ。



『誰かと一緒にいたい?』

 レンみたいな出会いがあったら考える。それ以外の人は…………別にいいかな。



『レンが好き?』

 レンは家族だから大事だよ。好きは……違うかな?好きって気持ちは、友達だった将也くんが隣のクラスの女の子を好きになって騒いでいたやつだよね?あれじゃないよ。



『寂しい?』

 レンが街に行ってしまったから寂しいよ。シドがいるから平気だけど、シドとはお喋りは出来ないしね。でもきっと、この寂しさも慣れると思う。



『これから何をしたい?』

 作りかけの魔道具を完成させたい。狩りに行くシドが、怪我とかしないで無事に戻れる様に付与を掛けてるからね。



『シドが居なくなったらどうする?』

 そんなの嫌だ!絶対探しに行く!決まってるよ!!



『シドが家族を作って家を出たらどうする?』

 ……………ねえ、僕はシドの家族じゃないって言ってるの?シドがお嫁さんをもらっても、一緒に暮らせばいいじゃないか!出て行く必要はないだろ!!




◇ ◇ ◇




 そんな質問に答える夢だった。起きたら涙が出てた。


 寝てたのに泣くなんて初めてだ。


 少し情緒不安ってやつなのかもしれない。気持ちがカサついているせいだな。


 レンは良くも悪くも喜怒哀楽がはっきりしている子だった。僕にもその一欠片があれば違っていたのかもしれない。


 でも、レンとの別れで僕にも『哀』はあったんだなって知れた。寂しいし悲しかったから。


「……グル!…ゴロゴロ…ゴロ…ゴロゴロ…」


 中々起きない僕を心配したのか、シドがベッドの上に上がって来た。

 寄り掛かる様に僕に身体を預けると、目を細めて喉を鳴らす。


 身体が大きく育ったシドを受け止める為に、僕もちょっとは鍛えてるんだ。重いけど、ちゃんと支えてゆっくりと頭を撫でる。


「寝坊してごめんね…僕は大丈夫だよ。遅くなったけどご飯にしよう。朝ご飯は牙猪きばいのししで良い?」

「グルゥッ!!」


 嬉しそうなシドの声に導かれて、僕も用意してキッチンに向かった。



 ねえ、シド。


 君は僕の大事な家族だよ。


 シドはどう思ってるのかな……?


 僕のこと、嫌いじゃないといいな。


 お願いだから、大好きだったお父さんみたいに黙って急にいなくなったりしないでね?


 その時は、僕じゃ駄目な理由をちゃんと教えて欲しいんだ。


 でないと、やっと普通になれたのに、僕はまた僕が嫌いになっちゃいそうだよ。



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