第12話 来訪者達
不意にシドの耳がピンと立った。
また誰か来たのかな?
窓から外を見ると、女の人が子供を抱えて柵の向こう側に立っている。
「『
…………うわぁ〜面倒事みたいだよ。しょうが無いからちょっと行って来るね。
ん?シドも一緒に来てくれるの?ありがとうね!
僕はシドを毛並みに沿って満足するまで撫で回して、それから一緒に外へと出て行った。
家から出ると、柵の向こうで子供を抱えた女の人が必死に叫んでる。キンキンとうるさい声だなぁ。久しぶりにお母さんを思い出したよ。はぁ〜……。しかも、庭に出て来た僕の姿を見てさらに声を上げた。
「………何の用?」
「ああ!魔法使い様!お願いします!この子をお助け下さい!!お願いします!!お願いします!!」
女の人はそう言って涙を流した。あんなにうるさかったのに、子供は目を瞑ったまま女の人の腕に抱かれている。身動きはしないけど、胸の辺りが僅かに上下していた。
子供はまだ赤ちゃんみたいに小さい。布に包まれて、男の子か女の子かも見ただけじゃ分からないね。
「その子を下に置いて1歩下って」
「……え?」
「出来ないならいいよ?じゃあね」
そう言って家に帰ろうとしたら、慌てて呼び止めて来た。
「あ、あ!お待ち下さい!!今……置きます」
少し躊躇いながら、女の人は子供を地面に置いて下った。
「『
僕は直ぐ様、女の人を『ケージ』で囲って出られない様にしてから子供を抱き上げた。女の人はケージの中で騒いでいたが、無視して子供の様子を確認しよう。
「『
名前 なし
性別 男
年齢 2才
状態 栄養失調、風邪、鼓膜破損
お腹が減ってるみたいだけど、熱もあるね。それに片方のほっぺが腫れて痛そうだ。耳の鼓膜も片方は破れてる。これも痛そう。
風邪の時って食欲が無いはずだから、確かお腹に優しい物を食べると良かったはず。でも先ずは風邪を治さなきゃね。ほっぺと耳も一緒に治そうね。
「『ヒール』」
うん、ほっぺの腫れは引いたかな。耳は大丈夫だと思うけど目が覚めてからちゃんと確認しよう。
それに熱があったなら汗もかいてるよね。水分を採ってもらうには、どうしたら良かったっけ?
僕は子供を抱えて、そのまま家の方へ歩いて行く。女の人が更にギャアギャアと騒ぎ出した。本当にうるさい。
「待って!その子を連れて行かないで!!」
「……何で?あなたの子供じゃないでしょ?勝手に連れて来たのかな?それとも買って来たのかな?」
僕の言葉に女の人は青ざめ言葉を失くした。涙もあっと言う間に引っ込んだみたいだね。
「帝国の人って泣くのが上手いね?アンゼリーナさん?」
「……は………あ、ど、どうして………」
そんなの最初に『
最近は鎧の人達が来なくなって静かで良かったのに、わざわざ違う国から何の用なの?
ただ、こんな具合の悪い子供を使う様な人達だから、悪い事を企んでるって僕でも分かるよ。
「僕ね、興味は無いけど、ここに来た人には何の用で来たか話を聞くことにしてるんだ。でもね、具合の悪い小さい子供を治療もしないで、森の深くまで無理に連れて来るのは駄目なことだって思うんだよね」
「…………………」
この子だって、知らない人に連れて来られて、きっと怖くて震えてたと思うよ?
でも大人には敵わないよね?
ご飯を貰えなくても、具合が悪くても、打たれたら怖くて何も言えないよ。
「それに、子供の鼓膜が破れるほど叩くって最低だと思うんだ。そんな大人はいない方が良いよね?いったい誰が叩いたのかな?」
「私じゃないわ!!」
ふ〜ん…それなら、森に隠れてる内の誰かが叩いたのかな?どっちにしても、こんな風に、子供を扱う大人は最低最悪だよ!
「『エリアエアレス』」
森に隠れてる人達に向って魔法を放った。色々な音や叫び声が聞こえて来る。あとは放って置けば、森林オオカミが綺麗に片付けてくれるね。
「『
「…………………」
この子をちゃんと休ませてあげないとね。
あの女の人も、もう僕に用はないでしょ。
シド、家に戻ろう。
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