第11話 騎士団

 狩りから戻って家の側まで来たら、柵の所に人が何人も来ていた。僕の家をジロジロ見て回ってる…………。

 それに、変な鎧みたいのを着てるよ。前にもいたけど、昔の騎士のコスプレかな?あんな重そうな鎧を着て森に入るなんて………バカな大人だね?


 見た感じ怪我もしてなさそうだから、そのまま家に入ろう。行くよシド。


 念の為、柵迄の間に僕とシドを囲う『シールド』を作っておいた。早くシドにご飯を作ってあげたいし、知らない人に邪魔をされたく無いからね。


「む?そこの子供止まれ!!」

「…………………………」


 うわ………偉そうな感じだ。これは関わらない方が良いタイプの人達だね。


 僕はチラッと横目に見ながら、そのまま止まらずに、鎧の人達と魔法使いっポイ格好をした人達の間を歩いて柵の中に入った。


「ぐっ!!何だこれは近づけ無いぞ!!」

「隊長!何かが邪魔をして入れません!」

「誰か!!あの子供を捕らえよ!!」


 1人だけ金色の鎧を着けた髭のオジサンが、僕を捕まえる様に命令した。


「…………僕を捕らえる??何でだよ?意味が分かんない」

「この、平民の曲に礼も取らず生意気な!無駄な抵抗をせずに我等の言う事を聞け!」


 はぁ……また変な人達が来たのか。何で初めて会った知らない人達の言う事を聞かなきゃいけないんだよ?大人なのに説明もしないで捕まえ様とするなんて、やっぱりバカなんだね。


「………ねえ、1つ聞くけど、何で僕を捕まえようとしたの《オベイ服従》」

「……あ?ぐっぅ!………も、森の……魔法使いを……捕まえ…隷属するた…め……」


 魔法を使って金鎧の人に聞いたら、この国の王様に言われて僕を捕まえに来たんだってさ。

 王様が子供を誘拐して来いだなんて、碌な国じゃないね。戦争とかしてそう。

 僕は、他の人達から『隊長』って呼ばれてた金鎧のおじさんに命令をして、そのまま国に帰らせた。………2度と来ちゃ駄目だよ…って。


 そして鎧の人達が帰って行ったのを確認して、僕とシドはやっと家に入って今日の獲物の調理に掛かったんだ。




□ □ □ □ □




 帰還した騎士団長が王の前で、報告をしていた。その声は震え、厳つい顔に薄っすらと涙を浮かべている。


 今まで、そんな騎士団長を見たことが無い王や側近の貴族達は、その異常に目を見張った。


「お…王様に……御報告…申し上げます。」

「騎士団長……どうしたのだ?!魔法使いは捕らえたのか?」


 震えたまま、騎士団長は事の経緯を報告をして行く。


 魔法使いは捕まえられなかったこと。


 その魔法使いは、まだ成人したか、していないかの子供だったこと。


 黒く大きな猫型の魔物を従えていたこと。

 

 その時、何かの魔法を掛けられ逆らえなくなったこと。


 帰還の道中、同行していた魔法使いに掛けられた魔法の解除をさせてみたが、解除には至らなかったこと。


 再び森の魔法使いの元へと来ようとした時は、自身の首を落とす様に言われたこと。


 王はその報告を聞いたが、全てを信じる事は無かった。




 そして騎士団長に再度、森の魔法使い確保へ行く様に命じると、王に否を言う事が出来ない騎士団長は『めてくれ!』と虚空に向けて叫びながら、その場で己の首を落としたのだった。


 躊躇いなく振るわれた切れの良い剣と、騎士団長の剛腕で落とされた頭部は、謁見の間の床を血を振り撒きながら転がり、非難する様な目を向けて王の前で止まった。


 その後、王は森の魔法使いを捕らえる事を諦め、以降、森の魔法使い接触を禁じた。


 それを破り接触した場合は、己の命を対価と考えよ。そう御触れを出した。






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