第4話

【探索者について語るスレ:■■■】


69 名無しの探索者

>>64

エアプ「霧波ツユハはゴールドだから雑魚!w」←う~んw

16歳でゴールドスターなのは普通に才能の塊ですよw

探索者として活動したこともないのにゴールドを雑魚って言うの恥ずかしいからやめた方がいい


71 名無しの探索者

>>69

尚同じ16歳で二つ名にまで選ばれた神童が居る模様

【黒炎】猫ノ宮ホムラ【定期】


77 名無しの探索者

そういえば今日黒炎の剣中層のボスにボコされたって聞いたけどマジ?


78 名無しの探索者

>>77

大体あってる


79 名無しの探索者

>>71

出たwww女性探索者アンチが唯一、神の如く信仰してる黒炎とかいう奴www

極論出してたのちいでちゅか~?

せめてきみがゴールドランクよりもうえにいってからよわいとかいうようにしようね~


80 名無しの探索者

>>77

全然違う

「深化した」中層の番人にボコされた


81 名無しの探索者

これ大体あってるとか適当言った>>77 やばすぎるだろ。

深化はマジで全然話が違うからな。

全滅してもおかしくなかったのに黒炎の剣と救助に来た人はよく最小限の被害に抑えたよ


83 名無しの探索者

ごめん、マジで聞き馴染みが無い単語なんだけど深化って何?????


84 名無しの探索者

>>83

マジか…もう深化も知らない奴が居んのかよ………

いやでも故意の深化は禁止にされて5年は経ってるから深化なんてわざわざ知ってる探索者はもう少ないのか……


85 名無しの探索者

>>83

簡単に言えばモンスターが魔石を大量摂取して本来の力よりもやばい力を手に入れた状態。

これ以上は自分で調べろ


86 名無しの探索者

>>81

尚トドメは勇者が刺した模様。配信見たけど黒炎ともう一人が死んだふりに騙されて思いっきりやられてて申し訳ないけど吹いたわ


87 名無しの探索者

>>85

サンガツ

大体わかったわ


88 名無しの探索者

>>86

先駆者とかいう雑魚が全然装甲貫けてないのに一発で両断したマサカズはマジでスゲェ

あまりにも格が違い過ぎる。同じ二つ名持ちとは思えない。


89 名無しの探索者

先駆者雑魚扱いは流石にエアプ


90 名無しの探索者

>>89

おっ!w

先駆者パイセンチーッス!!!ww

こんな所でレスしてる暇あったらもっと鍛錬したらどうっすかwww

初心者用の動画の為に雑魚狩りしてないでwww


91 名無しの探索者

>>90

と、二つ名どころか探索者として戦力にすらなれない奴が申しております


92 名無しの探索者

>>91

ファーーーーーーwwww

それが反論になると思ってるのマジすかwwww

戦力になれない奴に発言権ないなら先駆者さんにもないっすよwww

モンスターの浅知恵の死んだふりすら見抜けない二つ名持ちwww


93 名無しの探索者

なんというか、探索者じゃないから二つ名の凄さがイマイチわからん。

大体こういうとこやニュースでしょっちゅう名前があがるの二つ名持ってる有名人ばっかだし。どんぐらい凄いの?


94 名無しの探索者

>>93

探索者はダンジョニストで大きくランク分けされてて、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、そしてそれぞれにサークル三角トライアングル四角スクエアスターで細かく分けられたり。で、ダイヤランクの上澄みとか、ダイヤランクに居る唯一無二の戦闘能力を持ってるみたいな特別な探索者にダンジョニストから二つ名が与えられてる。

前者で有名なのは黒薔薇とか白巫女、後者が黒炎とか千狐

今の所二つ名持ってるのは92人だから、結構珍しくてめっちゃ強い人達って感じ


95 名無しの探索者

>>94

はえ~。92って絶妙に多いのか少ないのかわからん数やね


――――――――――


「…」


薄暗い自室。

部屋の中で明るく光るディスプレイから、匿名掲示板を眺める。

世間は、見る目がない。

カナタさんやホムラちゃんは、あれだけ頑張ったというのに半数ほどからの評価は「最後の最後で慢心し、不意打ちを避けられなかったマヌケ」として扱われている。


「…しょーもな。」


パソコンの電源を落とし、布団の中に顔を埋める。

ホント、あの煽りカスと同じ事を言うのは癪だが、何か言うのなら、まず自分が探索者としてモンスターと戦ってみればいいのに。

探索者として一度でも活動した事があれば、絶対に、二つ名まで到達した人達の事を馬鹿にするなんて思考は生まれないのに。


「……」




――――――――――


要塞蜂との戦闘を終えて3時間ほど。

『勇者』が来て戦闘が終わった数分後、続く様に救助隊が駆け付けて

そのまま流れる様に病院へと運ばれて行った。

辿り着けばすぐに治療の後に検査を受け、検査の最中に院長である蒼井ユウから声を掛けられたり、色々とあったがなんだかんだ問題が無い事を確認されてからようやく解放された。


「全くもぉ、カナタちゃんが運ばれたって聞いて滅茶苦茶びっくりしたんやけんね?」

「…すみません、お手数おかけしてしまって…」

「ええわええわ。大した怪我がなかったんわかって安心したし。ほな、ジブンは他の子見てくるから。」


軽い会話だけでそのまま去っていったのは、流石に忙しいんだろうなと感じたが…

そんな少しバタバタとしている院内、他の人達の邪魔にならない様に待合室で腰を下ろし、スマホを開く。

メッセージを開けば様々な場所からメッセージが来ているが、ダンジョニスト運営からは特に通知がない。まだ今回の事について話し合っている最中なのだろうか。


『大丈夫でしたか』

『ニュースで流れてきたんだけど、無事だよね?配信見れてないから返事してね』

『元気なら既読だけでも付けろ』


とりあえずは、心配を掛けた友人達へ返信を送っておき無事な事は伝えておく。

速攻で既読が付いた人もいたが、一旦スマホは閉じて立ち上がる。

運営がまだ何も言っていないなら、今の内に済ませておくことがある。


「…アレ?カナタさんですか?どうかしましたか?」

「すみません、一つお聞きしたい事が……」


――――――――――


看護師さんから教えて貰い、ある一室まで案内してもらう。

コンコン、とノックをすれば少しの間が空いた後に「どうぞ」と言われるので、そのまま中に入る。

病室に居るのは先の戦闘で多数のモンスタービーを相手取ったり、救助まで持ちこたえたりと勝利の為に一役買ってくれた『黒炎の剣』ギルドマスター、城ヶ宮ハルさんだ。

来た人間が私だと気付いた城ヶ宮さんは表情をやわらげて歓迎してくれる。


「おぉ、カナタ君か。……折角来てくれたってのにこんな恰好じゃ良くねェよな。ちっと待ってくれ。」

「あぁいや、そのままで大丈夫ですよ。安静にと言われているでしょうし、無理はしないでください。」


無理に起き上がろうとするのをなんとか制止すれば、「…そうか。」とだけ言い、体勢を戻してくれる。

ここに来たのは話したい事があるというのをわかってくれているのだろうが、あまり怪我人に無理をさせるのはこちらが申し訳ないし、蒼井院長に怒られかねない。

早い所伝えるべき事を伝えて安静にしてもらおうと思い、早々に口を開く。


「城ヶ宮さん。」

「……」

「本当に、申し訳ございませんでした。」


そして深く、頭を下げる。

向こうからの返答は無い。

私は頭を下げたまま続ける


「猫ノ宮ホムラさんが最後の一撃を受けてしまったのは、他でもない私の責任です。」


私はあの時、判断を誤ってしまった。

要塞蜂が起き上がったあの瞬間、即座に攻撃することを選択したが、

それにより意味のない行動に1手を使ってしまった。

変に行動せずあともう少しだけ観察していれば、要塞蜂が起き上がった瞬間に「アレが何をするのか」を考えていれば、あんな結果にはならなかった。

挙句の果てに、予想も出来ていなかったが為に行動に迷いが現れ、その結果彼女がこちらを庇わざるを得ない状況にまでしてしまった。


「カナタ君、そんな風に頭を下げるもんじゃねぇ。」

「……」

「黒炎の剣は君が居なけりゃ確実に全滅していた。恩人相手にこちらが感謝することはあれど、頭を下げさせるなんて事があっちゃあいけねぇ。」


頭を上げれば、城ヶ宮さんは体を起こしてこちらに向けている。

その表情は少し険しいが、それはこちらを責めているからではない。


「さっき、比較的軽傷だった奴らとも話したが、1人として君に文句を言う者は居なかった。」

「言わなきゃ気が済まねぇだろうから言わせたが、本来なら頭を下げるべきはワシの方だ。」

「…そんなことは」

「ないこたァねぇ。元を辿れば一番最初に判断を誤ったのは進む決断を下したワシだ。どれだけいやな予感があっても、中層であれば負ける事はないと高を括っていた。慢心していたんだ。」


「その結果カナタ君を巻き込んじまったんだから、尚の事な」と、城ヶ宮さんは頭を下げる。


「それにだな…」


そう言って、城ヶ宮さんは仕切りカーテンを開く。

カーテンが開かれればそこには、特に怪我をした様子も無くイヤホンを付けスマホを触る彼女…

猫ノ宮ホムラが居た。

カーテンを開けられて顔を上げた彼女と目が合い、何もしゃべれないこちらと違ってホムラさんは笑顔でこちらに駆け寄ってくる


「やっほ!カナタさん!」

「……なんで……………?」

「これに関しても、カナタ君のおかげだ。」

「い、いやいやいやいや!!!!!」


流石に理解が追いつかない。いくら自分が色々やってたにしても、あんな威力の攻撃を耐えられた理由にはなれない。

あれは誰が受けても即死は免れないレベルの……


「まぁ、ボクがこうして無事だったのは、これのおかげだね。」


そう言ってホムラさんは人差し指をピンと立てて、こちらに見せてくる。

見ていれば、彼女の代名詞である黒炎が彼女の指先を包む様に燃えている。

随分と綺麗に出されている。魔力操作の上手さが伺えるが、別にだからと言って、仮に自分の体を守る様に魔法を出しただけでは私が何か関わっている訳では……


「…いや…違う?」


黒炎で防御をするにしても、毒液の噴射の威力を抑えるだけの火力は出せなかったはずだ。

そもそもあそこまで正確な操作が出来るのなら、あの時に直接叩き込む様な真似をせずとも遠くから当てられたはずだ。

武器も持たずにそこまでの魔力操作を見せる探索者ならとっくの昔に……

そこまで考えた所で、一つの可能性に気が付き彼女の指先に視線をやる。

綺麗だ。指がとかそういう話ではなく、黒炎で包んだ指先とそうでない部分の厚さに違いを感じない。

それはつまり、指先を魔法で包んでいるのではなく……


「一部肉体を魔力で構成された魔法体に変化させる特性…………」


この特性を獲得出来る、体が魔法体で出来ているモンスターは1種類しか居ない。


「スライム…まさか、アレが?」

「当たり!アレなら魔法みたいに放出するよりも余程燃費が良いからね。おかげ様で、ギリギリ。」


にへら、と笑いながら話すが、こちらからすれば奇跡なんてものじゃない。

モンスターの特性なんてものは、手に入れようと思って取れるものではない。

私が知っている人物じゃモンスターから特性を手に入れている探索者は6人だけ。

恐らく知らない分を数えても10人前後ほどだろう。

それなのに上層のスライムの魔石から得るなんて、どれだけ運が良ければ……


「ワシらがホムラを見つけた時、酷い怪我なんてもんじゃあなかった。蒼井先生からは『特性を手に入れたのも、特性と魔法のおかげで生き残ったのも、問題なく治療出来る程度の傷にしかならなかったのもたまたま噛み合っただけの奇跡』だと言われたよ。」

「…でしょうね。」

「でも、その奇跡のおかげでこうして五体満足で帰ってこれた!本当に、ありがとね!カナタさん!」


そう言って笑う彼女の表情に、どう返せばいいのかわからなくなる。

なんというか…本当に、たったの16歳で二つ名に選ばれる理由が今日だけでよくわかった。

初対面を信じて命を預けられる度胸、たまたまが何度も起こるほどの豪運、大怪我を負っても気にしない精神力に、そもそも黒炎という彼女特有の魔法を創り出してしまう才能。それだけ詰め込まれていれば、それは当然、すぐにでも強くなってしまうだろう。

彼女の怖さを、少し理解した気がする。


「でも…貴方が無事だったのなら本当に良かった、ホムラさん。」

「……!えと……はい。めっちゃ無事です。」


突然起こってしまった要塞蜂との戦闘。

結果は怪我人こそ多いが、死者は0。出来過ぎだと言えるだろう。

とはいえ…問題が解決したとは言えない。

深化が突然発生した原因、それと…勇者についても。

早い所こちらからも動いた方がいいだろう。


「とりあえず、言いたい事は言えましたし、自分は失礼しますね。」

「…あぁ、そうだ。カナタ君。」

「はい?」


その場を去ろうとしたとき、城ヶ宮さんから声を掛けられる。


「いや、なんだ。調べてみたんだが、『先駆者』は一人で活動しているって聞いてね。もしそちらが良かったらでいいんだが、黒炎の剣に入らないか?」

「!それ、良い!カナタさんなら皆人柄でも実力でも文句ないだろうし、きっと大歓迎だよ!」

「………すみません、もうしばらくはソロの方が都合がいいので……」


ギルドからの勧誘。

普通なら探索者として、それは何処からであっても嬉しいものだろう。

ギルド所属はそれだけで箔が付くし、信頼出来る仲間が居ればパーティーで問題が起こる事も少ないし、所属ギルドからの支援も大きい。

本来なら拒否する理由なんて、それよりも大きいギルドに行く予定が無ければないのだが。

正直、今の私にはギルドに所属して探索者活動を行う程のモチベーションが無い。

勿論それ以外にもギルドに所属できない理由はあるが、今はとにかくこれが一番の理由だ。

折角誘ってもらったのに断るのは申し訳ないが、やる気の無い人間が入って結果的に足を引っ張ってしまう方が申し訳が立たない。

ホムラさんの方は「えぇ~~~!?」と残念そうに言っているが、城ヶ宮さんの方は少し納得したような表情をしている。


「そうか…まぁ、カナタ君の意思の方が大事だからな。だが、ワシらが君から受けた恩は絶対に忘れねェ。どんな事があったとして、ワシやホムラ、そして黒炎の剣のメンバーは全員カナタ君の味方だ。気が向けば何時でも遊びに来てくれて構わねェし、助けを求めればワシらは必ず駆け付けよう。」

「…ありがとうございます、私も、皆さんの事忘れませんから。」

「おう、またな!…ほらホムラ。お前もちゃんと挨拶はしろ。」

「…はーい…またね、カナタさん。」


最後まで心底残念そうな声色でお見送りされ、少し苦笑しながらも病室を後にする。

病室を出ていけば、こちらを待っていたかの様に前で立っていた人達と目が合う。

ソイツは出てきたこちらを見ては薄ら笑いを浮かべ、私を囲みながら肩を掴んでくる。


「待ってましたよ~、先駆者ちゃ~~ん。」


『勇者』陽彩マサカズ

二つ名を与えられた探索者の1人にして、私ですらその名前を知っている問題児。

実力自体は申し分ないのだろうが、如何せん素行の問題が目立つ。

定期的に活動中や発信での言動が問題視され、炎上している印象が強い。


「……ここじゃ周りの邪魔なんで、話なら向こうでしましょうか。」


とりあえず、万が一にも2人の病室の前で騒ぐような事になってはいけない。

用件に大方予想は付くが、一先ずは移動する。

なにかしら文句を言われると思っていたが、向こうも流石にここで問題を起こしたくはない様で素直に従ってくれる。


「それで、私に何の用が?」

「ははは、随分とせっかちだねぇ。」


ニコニコと笑みを浮かべながら話をしているが、そんな彼の笑みとは対照的に向こうのパーティーメンバーである女性達は黙ってこちらを睨みつけている。

明らかに、平和的な話し合いが行われるとは思えない状況で、笑みを浮かべたまま彼は本題に移る。


「いやなに、あとで黒炎の剣ともやっておこうと思っていたんだけどね、こちらで『取り分』について先んじて話し合っておこうと思ってさ。いやほら、僕達ってお互い救援に来た探索者で同じでしょ?」

「……えぇ、まぁ、そうですね。」


取り分…まぁ、やはりかと内心呆れてしまう。

勇者である陽彩マサカズの問題行動として炎上する1番の原因は金や魔石関係。

ダンジョンでの「基本トドメを刺した人間に回収の権利がある」という暗黙のルールを悪用してダンジョン内で横取りするようにモンスターを倒したり、それに文句を言った探索者に嫌がらせを行っていたり…

他にも武器が1回の探索で壊れたから返金要求をしたが、実際は配信のネタとして明らかに壊すつもりで雑に扱い続けていた事を指摘されて逆切れしていたり…

運営も対処をしたいのだろうが、二つ名を与えられるほどの実力や、その過激さや裏表のない発言が支持されているのもあって下手に動く事が出来ず注意だけに終わっているとかなんとか。


「しかしまぁ、要塞蜂のトドメを刺したのは僕なんだから……少しぐらい多めに貰ったっていいだろう?」

「どれぐらいですか。」

「うーん、そうだなぁ……黒炎の剣がギルドなのもあって半分は取るだろうから……4割ぐらいだろうか。」


ごっそり持ってくつもりじゃん。

勿論、本来であればトドメを刺した人間がある程度多めに貰えるべきだ。

とはいえ、勇者は最後の最後にやってきて、トドメだけをもらっていった。

これで4割は流石におかしいだろう。


「少しぐらい、のレベルを超えてると思うんですけどね。何処まで行ってもそちらは3割じゃないでしょうか。」


本当はあっても2割だろうが、流石にそこまで減らすと反感を買ってしまいそうだと思い抑える。


「ハァ?アンタ雑魚を散らして要塞蜂にかすり傷程度にしかならない攻撃しておいて、もっと取り分が欲しいなんて駄々をこねるつもりなの?」

「まぁまぁ…悪いね、ウチのマギカが。ただ、彼女の言い分も最もだとは思わないかい?」

「………」


しかし、向こうからすればそれでも駄目だったらしい。取り巻きの1人であるいかにも魔法使いの風貌をした女性がこちらに喰って掛かってくる。

そんなパーティーメンバーに勇者は笑顔で仲裁をしてまるでこちらの意思を尊重している様に言っているが、全くと言って良いほど譲歩の姿勢が見えない。

どうやら本気で私の取り分は1割で良いと思われている様だ。


「勿論、そちらの気持ちもわかるよ。あれだけ必死に戦って黒炎も死にかけ、そんな自分よりも最後に現れた僕達の方が取り分が多い事が許せないのだろう?」

「そんなことはありません。ただ」

「しかし!ハイゼルボウなんて不相応な武器を持って深化したボスモンスターと戦い、最終的にはモンスターの浅知恵程度に騙されあの結果を作り出したのは他でもない貴方ではないのですか?狛神カナタさん。」


「フン。」と先程の彼女が鼻を鳴らしこちらを見る。

成程。向こうの言い分ではこちらは救助に来るべきではなかったのに来た身の程知らず扱いという訳か。

まぁ実際、ハイゼルボウで戦ったのはかなり難しい状況になった要因の一つであるのは否定できないが…


「こちらは、別に自分の取り分に文句を言っている訳ではありません。」

「……はぁ。それじゃあ一体何に?」


いや、本当なら色々と文句を言いたい。

いくらなんでもそっちは取りすぎだし、こっちの事を舐めすぎだ。腐っても二つ名持ちだしあの戦闘は彼女の努力の結果でもあるが、自分自身もかなり貢献したという自覚がある。

しかしここにあれこれ言ってもどうしようもないので、せめて渡されるべき相手に報酬を渡す。


「今回の戦闘での一番の功労者は黒炎の剣、そして黒炎であるホムラさんです。彼女達にただ半分渡すだけ、では足りないと思います。」

「あぁ、でしたらあなたが自分自身の取り分を向こうに渡せばどうでしょう?そしたら綺麗に分けられますね。」

「いいえ、向こうの取り分は6割ではありません、7割です。私とそちら、それぞれ先程の案から1割ずつ差出します。」

「………………」


陽彩マサカズの顔から笑顔が消える。

瞬間、空気が一気に重くなる。

ただ黙ってこちらを見つめているだけだが、彼から発せられる重圧は取り巻きだけではなく更に周りで会話をしていた無関係の人間すら一瞬黙ってしまう。

二つ名を貰っている人間なだけはある。


「これ以上が欲しいのでしたら、黒炎の剣のギルドマスターと交渉してください。」


ただ、こちらだって伊達に長く探索者をやっている訳ではない。

命のやり取りなんてものは何度だってやってきたし、目の前の彼より圧を感じるモンスターもいくつも倒してきた。今更脅しを恐れる程甘い人生を送っていない。


「……………」

「…それでは、お話はもう終わりですよね。」


向こうは未だに何か言ったりもしないが、こちらとしてもこれ以上話す事は何もない。

取り分の話についても私の分は無くなったので、あとは城ヶ宮さんに丸投げの様になってしまったが、まぁあの人なら恐らく大丈夫だろう。きっとギルドマスターとして仕事を全うしてくれる。

椅子から立ち上がりその場を去ろうとするが、一度だけ向こうの様子を確認しようと振り向く。

しかし、陽彩マサカズも取り巻きも何も言わず動いている気配はない。


「…お疲れ様でした。」

「…………うん、お疲れ。」


一応の礼儀として、挨拶だけすればかえって来る。

もう動いてしまったので彼の顔は見えないが、返事が来たのでとりあえずはもう大丈夫だろうと思いその場を立ち去る。

一先ず、面倒そうな所を片付けられたのはよかった。

ただ、ちょっとやな気持ちになったので甘い物でも買おう。そう思いながら病院の出口へと向かった。


「……狛神カナタ…先駆者、ね。」

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