第28話 行って
「『
パリパリと空気を焦がすほどの雷撃が走った。光希を喰らおうとしていた
プロペラの旋回する音が
「私たちが掴んだ情報を持ち逃げして抜け駆けなんて、いくら光希でも許さないんだからね!」
涼に続けて夏美が叫びながら舞い降りる。両手には拳銃がそれぞれ握られていて、戦闘用意は万全だった。
「うおおおおおおおお!」
「
雄叫びとともに地面にどんと足を着けるのは夕姫。涙目で情けない叫び声を上げて降下──というよりも落ちてくるのが夕真。
「楓さんんんんっ! このわたくしの自家用ヘリ! これが! 愛の力ですわああああああああっ!」
恥ずかしげもなく甲高い声を上げて亜麻音までもがやって来る。
それは愛じゃなくてカネの力だ、と全員が内心でツッコむ。五星結界の内部でも黄昏でもない夜の真っ只中に、ヘリで乱入してくるなんて本気で馬鹿げている。ぼろぼろになっていた光希さえ、呆れや困惑を通り越してもはや笑えてきた。
「おまえら、学校はどうしたんだよ!」
「「ブッチしてきたっ!」」
夕姫と夕真が親指を立てて清々しい笑顔を見せる。見事なまでの純粋な学校サボり発言にもう言葉は出てこない。危険だから、と置いてきたはずが、立場は逆転していた。
「……だが、
涼の刀が翡翠に輝く。霊力を纏わせた鋭利な刃が飛び掛かって来る
「私も負けてられないよね!」
夏美の両手に握られた拳銃が術式を撃ち出す。二丁の拳銃は術式を保存し、保存した術式は霊力を流して引金を引くだけで発動させられるという代物だ。術式構築の時間を省き、速さを追求したもの。陣を使った安良城の術式の弱点──発動までの時間の長さを補う最適解。術式で編まれた弾丸が容赦なく黒い獣たちの脳天を突き破る。
「『第十五式、
瞬間、氷の花が地面に咲き乱れた。銃を撃ちながら、陣を描き、術式の構築をしていたのだ。低温が
「よし! 私たちの出番だ、夕真っ!」
「行くぞぉ!」
「「『我は天理を敷く者、世を
夏美が動きを鈍らせた
「『
亜麻音が呟けば、双子に忍び寄る
「ななな何したの!?」
「何も存在しない空間を疑似的に体験させているだけですわ。わたくしの幻術では、まだこの程度が精一杯ですけれど」
光希は亜麻音が無力化した
「まずいな、これは……!」
「大丈夫! 私たちは先行してきただけ! 安良城家当主として、
「楓のところへ行ってあげて!」
「「行って!」」
「楓さんを、そしてできたら花蓮をお願いしますわ!」
光希は頬についた血を拭い、叫び返した。
「助かる! 行ってくる!」
光希の刀が今一度光を増す。ふっと息を吐いて、
「行きなさい! 例の使用許可は下りたわ。……楓を、救ってあげて」
木葉の声を載せた風が光希にだけ吹いた。後ろで木葉がきりきりと弓を引き絞る姿が見える。紫の光の矢が分かたれ、光希の前で雨のように降り注いだ。それは、多くの
道はもう拓かれた。ならば、この足は囚われの姫君の元へ向かうためだけに在る。
躊躇わずに走り出す。
おまえを迎えに来たんだ、と伝えるために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます