第26話 運命を告げる青い羽
私の声は貴方に届いていますか?
今日は占いと青い鳥についてお話します。
貴方は、占いとかジンクスって信じますか?私は結構気にしちゃいます。日課なのは朝にチェックしてるネットの血液型占いや誕生日占いですね。あと、宇宙船で有名なのは、宇宙船から見える星の瞬き占いとか、地球の文化を輸入したタロットカード占いなどなど。
ラッキーカラーとか神社で引けるおみくじに書いてるアドバイスとか、ついつい「なるほどー」って従いたくなっちゃいますよね。ちなみに今日の占いは「今日はアクティブに過ごしてみましょう!笑顔を忘れず、青いものを身につけて出かければ、素敵な出会いが訪れる予感」でした。ニコニコしていないとダメなんですよ。
さて、今日のラッキーカラーは青です。これは青いものを身に着けていればいいんですか?青いものが落ちているのかも?青い食べ物……はちょっと遠慮したいですね。そして今日は休日です。アクティブに過ごすためにも、いつものネタ探しの旅に出かけようと、私は青いハンドバックを引っ張り出して、目的のない散策に出かけました。
「さて、今日はどこに行こうかなー。自然公園かな?ショッピングモールかな?神社にでも行こうかな?」
そんなことをつぶやきながら、学校の寮を潜り抜け、運動部の部活を横目に見ながら校門の脇を抜けようとしたとき、青い影が視界を横切りました。
「あれ?……鳥さん?」
ちょうど校門の上に、見たこともないくらい美しい青い鳥さんが留まっていました。全身が濃淡のある青い羽毛で覆われていて、光が当たるたびにキラリと微かに輝いて見えるんです。その羽根は、まるで空の青と海の青をそのまま閉じ込めたみたいでした。
鳥さんは少し首をかしげて、じっと私を見つめてきます。こちらに興味があるのでしょうか?
「鳥さんはお一人ですか?これからどこかにお出かけですか?」
そう呼びかけながら近づいてみます。もう少しで手が届きそうなくらいの距離まで来たとき、鳥さんがこっちに飛んできました。びっくり!私の頭の上に乗り、「トゥルル、ピュイッ」と一声鳴いたかと思うと、また飛び立ち、少し先の木の上に留まってまたこちらを見てます。
「わあ、もしかしてこれが今日の素敵な出会い?私のお出かけに付き合ってくれますか?」
こうして、鳥さんとの行先不明、不思議なお出かけが始まったのでした。鳥さんは時折私の頭や肩に飛び乗り、「チュルルルっ」と一声二声鳴き、また少し先に留まってはこちらを見てを繰り返します。私も楽しくなってきます。
「ちゅるるる♪ちゅるるる♪おっでかっけ♪おっでかっけ♪」
「チュルルルっ♪チュルルルっ♪」
「ちゅるるる♪ちゅるるる♪おっでかっけ♪おっでかっけ♪」
「チュルルルっ♪チュルルルっ♪」
「ちゅるるる……、あ、そうだ。」
「ピュイ?」
私はAR端末のカメラを鳥さんに向けながら問いかけます。
「鳥さん、お名前は?誰かのペットかな、ちょっと見せてねー。」
「ピュ。」
突然ですが、宇宙船ではペット枠は主に鳥さんです。犬猫のペット化が進んだのは地球において1万年から1.5万年ほど前と言われ、宇宙船が出発した10万年前においては野生種しか存在しませんでした。一方で鳥は10万年前には種として安定していて、私たちにとって良き隣人だったと言われています。
今の宇宙船では鳥のペット化が進んでいて、放し飼いにしていても迷い鳥が出ないシステムが構築されています。まあ、宇宙船が大きな鳥かごのような状態ですね。AR端末のカメラ越しに覗けば、登録済みのペット鳥なら種族・名前・飼い主の名前がわかるのです。すごいでしょ?
「えっと、青い鳥さんはルリガラスって言うんですね。名前は……あれ?野生の鳥さんですか?名前も飼い主さんの名前も出ませんね。……これだけ人に懐いてるから、てっきりどなたかのペットさんかなと思ったのですが?」
「……。」
しーん。
あたりには私と鳥さんだけしかいません。
そういえば今、私はどこに向かっているんでしょうか?こんなところ、来たことあったっけ?道に見覚えがありません……。学校から歩いてきたはずですが、どっちから来たのかもあやふやです。
空はどこまでも高く青く澄んでいます。陽射しは柔らかいけれど、じんわりと肌に熱を感じる初夏の光です。それでも木陰に入ると、ひんやりとした風が心地よく吹き抜けました。遠くでは鳥のさえずりや、木々の葉が風に揺れる音が聞こえます。……それなのに、なぜかその音が妙に遠く感じるのはどうして?
「あれ?人工物がない……。」
いくら青空でも、ここは宇宙船の中です。どこか人工的な建築物が見えるはずなのです。それなのに……。あたりは不自然なくらいに、自然な風景が広がっています。
振り返ると、陽の光に照らされた自分の影がやけに濃く感じられます。影の輪郭が少しだけ揺れているような……いや、気のせいでしょうか?
鳥さんの「チュルルル」という軽やかな声がまた耳に届き、私は前を向きました。その声は確かに明るいはずなのに、妙に静まり返った空気の中で、少し浮いて聞こえる気がします。陽光にきらめく青い羽が視界を横切り、鳥さんが先に進むように飛んでいきました。
「え、えへへへ……。今日は、笑顔を忘れないようにしないと、だよね?」
「クルルル……」
鳥さんは私の頭に乗ったり、また少し離れて振り返ってきたり、私を誘っているようです。私はまた楽しくなってきます。
「ちゅるるる♪ちゅるるる♪おっでかっけ♪おっでかっけ♪」
「チュルルルっ♪チュルルルっ♪」
空はどこまでも高く青く澄んでいます。陽射しは柔らかいけれど、じんわりと肌に熱を感じる初夏の光です。それでも木陰に入ると、ひんやりとした風が心地よく吹き抜けました。遠くでは鳥のさえずりや、木々の葉が風に揺れる音が聞こえます。
「ねえ、鳥さん。ここって、『日本』なのかな?」
「キュル」
「それとも、『不思議な』場所?」
「キュルル」
「ねえ、鳥さん。貴方は私をどこに連れて行ってくれるの?」
鳥さんが羽ばたき離れていきます。視線を向かわせると、そこにはひっそりとした神社が現れました。赤い鳥居の上から、青い鳥が見下ろしています。私は導かれるように歩き、ひっそりとした境内に向かいました。青い鳥は再び降り立ち、今度はくじ引き箱のそばに留まります。
「これを引けってこと?」
無人のくじ引き箱の傍にはキャッシュレス端末があります。これは宇宙船の設備……、元の場所に戻ってきたようです。ちょっとホッとしながら支払いをすますと、くじ引き箱が開き、中からくじが出てきました。くじ引きの紙を開くと、こんなメッセージがありました。
――将来、あなたに重要な選択肢が訪れるでしょう。心に従い、道を選びなさい。――
「重要な選択肢……かあ。鳥さんはこれが伝えたかったの?」
振り返っても鳥さんはいません。代わりに境内の片隅に、青い鳥の石像がありました。石像の傍には看板があり、由来が書いています。
「青い羽根を持つ鳥が現れた時、それは運命の出会いを知らせる合図とされています……かあ。石像さんが鳥さんだったの?」
「ぴゅいーー!(ビシッッ!)」
「あいた!痛い!うしろ突っつかないで!?お、怒ってるの!?」
「ピーー!」
鳥さんは神社の石像ではありませんでした。結局鳥さんは、最後まで私について来ます。飼っていいのかな?名前を決めちゃっていいのかな?
「ピョロロロ♪」
鳥さんは私の肩に飛び乗り、軽やかに鳴きます。その青い羽根が光にきらめいて、本当に美しいです。さっきの石像の看板に書いていた、宇宙船の言葉で、「青」を示す言葉「ろあぬ」を思い出しました。
「青……そうだ!君、すごく綺麗な青い羽を持ってるから、『ろあぬ』……『ろあ』って名前はどう?」
「ピュイ!」
鳥さんは嬉しそうにもう一声。きっと気に入ってくれたんだと思います。
「ふふ、じゃあ、今日から君は『ろあ』だよ!よろしくね、ろあぬ!」
これが今日の素敵な出会い、私の相棒の「ろあ」との出会いでした。
さて、今日はお時間となりました。ところで、「重要な選択肢」って何なのでしょうか。それがどんなものか、まだわからないですけど、もしかすると、これからの私の旅に関わることかもしれません。とはいえ、占いの言葉は気にしすぎてもいけないのです。日々の行動のちょっとした指針にする程度で良いと思うのですよ。貴方は占いを信じますか?――それでは、また。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます