第2話 りんごの苦労

さっそく、母に訓練を頼まねばならん。

しかしおれは絶賛思春期中だ。母に頼むなど……


…………………。


父さんいま出張中だったわ。だめだ。母に頼もう。



母に話した。

「そうか、いつきもついに包丁を握るときが来たようだな。よし、教えてやるからかかってこい!!」

「イエスマム!!!」


かあさまは勇ましかった。



~・~・~・~・~・~・~・

「爪よし!髪よし!その他よし!手は洗ったか!?」

「はい、洗いました!!」

「それでは訓練を始めよう。皮の剝き方は教えてもらったのか?」

「果肉を取りすぎなければよいとのことです!」

「よろしい。では私が手本で剝くからそれを見ていなさい」


・・・


「わかったか?」

「やってみます!」

「ではまず包丁を握れ」


さっき母さまがやっていたように握ればいいんだな…?

人差し指から小指までで包丁についている棒を握り、親指を刃の部分に添え…


あれ?添えない。…もう一回最初からしてみよう。


あらら?もう一回。


ん?



……。おれ他の人より手が小さいんだった。そりゃ普通の人の持ち方じゃ持てんわ。


え、どうすんのこれ。握れなかったら何も進まないんだが…!いや、高1になっても大きくならない手が悪い!おれはなにも悪くない!!


母さまがおれのただならぬ様子に気づいた。

「どうした、二等兵。なにかあったのか」

「大将…。おれにこの包丁は大きすぎたようだ。持てない」

「ふむ。もう一回持ってみろ。…。人差し指が本来あるべき場所に置かれていない。人差し指は中指たちと同じ場所だ」

「しかし大将。移動させると包丁を支えきれなくなってしまう」

「大丈夫だ。母を信じてやってみなさい。下にスポンジを敷いてるから包丁を支えられなくても問題ない」


ほんとに大丈夫なのか?まじで?


っっふーーーー。……よし。


▶樹は包丁を前にした!


▶樹は包丁を握った!


▶樹は親指以外で包丁の握る部分を持った!


▶…少し力んでいるが持てている!


♪テッテレーー!

▶ミッションコンプリート!!



成功した。おれすげえ。


「できたか!?では次にいくぞ。りんごの種を取ろう。樹は右利きだから、右手に包丁、左手にりんごを持つんだ。そして、種の近くの固い部分を切り取る」


母さまはりんごの種のすぐ近くに斜めの切込みを入れた。そしてりんごの向きを変え、反対側も同じように切れ込みを入れる。すると種の部分がきれいに切り取られた。


なるほど。いけそうだな。


サクッ。サクッ。


「上手だよ樹!きれいな三角だ」

「そ、そうか?まあおれほどにもなるとこんなものは」

「じゃあ次はお待ちかねの皮むきだ。テストでは6等分されたりんごの種取りと皮むきするんだろ?包丁をりんごの形に沿って滑るように皮を剝くんだ。やってみろ」

「え゙」


まじで?レクチャー全然やさしくないんだけど………。え、ガチで言ってる?

な、なんか圧すごいけど、いやもう全然無理だよ?無理ゲーだよ?







えいっ。


うん?刃がりんごに刺さらないだと!?しかたない、もう一回やろう。


えいやっ。


お、刺さった。それで、ぐるーっと剝くのか。おれに任せろ!





「母さま、剥けたぞ」

「……すまない、言うのはどうかと思うが…。剝くの下手だな。一切れ剝くのに6分かかっていた。果肉もごっそりなくなっている…」

「わかってるよ!でもこうなるんだ」

「皮を一回で剝くからではないか?二回に分けて剝いてみなさい」


・・・


「さっきよりかはマシだな。あとは練習あるのみだろ。残ってるりんごを全部剥け」

「……イエスマム」


・・・


全部剝き終わった。もうやりたくない。指痛い。足も痛い。腰も痛い。首も痛い。家事なんてするもんじゃないな。楽しいこと一個もねえ。



自分で剝いたりんごを食べるのは楽しかった。美味しすぎて母にも分けてやった。

おれ優しい。




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