第29話

「マネージャーを変えて欲しい?」

社長が驚いたように絵里香を見た。

「お前は伊庭を気に入っていたと思っていたがな」

「私は伊庭さんを愛しています。だから頭を冷やしたいのです」

絵里香は声を押し殺していた。

「それは本当の事か!」

社長の顔が強張っている。

「それは直ぐにマネージャーを変えよう」

社長は一つ返事で了解した。

絵里香はゆっくり頭を下げた。


早速、翌日から新しいマネージャーの谷口がやって来た。

「絵里香ちゃんの趣味は何?俺はね…… 」

谷口は絵里香とスキンシップを取ろうとする

が、絵里香は冷静に言った。

「私の事は須田さんでお願いするわ。馴れ馴れしいの好きじゃないの」

谷口は黙ってしまった。

移動する車の中で、絵里香は台本を開いて読み始めた。今日は劇団時計坂での演技稽古の日である。

絵里香には今日もスケジュールがぎっちり詰まっていた。

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