第28話

その瞬間、全ての時が止まった。

一切の物音も聞こえない。

絵里香の身体は、余りの衝撃に硬直してしまった。

茫然としていた。

どれ程の時が経ったのか、絵里香はヨロヨロと立ち上がり、無意識のうちに鞄だけを持って伊庭の部屋を出て行った。

どうやって自宅まで帰ったのか、全く覚えていない。

絵里香はフローリングの床に崩れるように座ると、そのまま泣き崩れた。

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