第30話

翌日仕事が終わった後、絵里香はいつもの貸しスタジオに行った。だがもう一緒に稽古してくれる伊庭はいない。

絵里香は一人で田村に指導された演技練習をこなしていた。そして台本を開いて演技を始め

た。だが相手役をしてくれる伊庭はいない。

絵里香は台本の文字が涙で霞むのをどうしようもなかった。慌てて涙を拭うが、拭っても拭っても後から涙は零れ落ちた。

当然ながら、谷口は仕事後の演技練習に付き合ってはくれない。絵里香は今までの日々がいかに恵まれていたかを思い知らされていた。

伊庭さん……!

絵里香はその場に泣き崩れた。

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