第27話

絵里香は荷物を投げ出すと、堪らずに伊庭を抱きしめていた。

伊庭の頰が涙で濡れている。

伊庭は何も言わなかった。

「私があなたの側にいるから……!」

伊庭はそっと絵里香を引き離した。

「何故、此処にいるんですか……?」

「あなたの事が気になって…… 気がついたらここに来ていたの」

「帰って下さい」

伊庭の声には温度が感じられない。

絵里香はこんなに冷たい伊庭の声を初めて聞いた。

「あなたの顔は見たくないんです」

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