第26話

恭子……

伊庭は食事も取らず、部屋で天井を見つめていた。

絵里香は、伊庭のマンションに来ていた。今日はオフである。絵里香は伊庭に差し入れを用意していた。

自分の部屋にいてもどうにも落ち着かず、気がついたら伊庭の元に来ていた。

呼び鈴を鳴らしても反応がない。

そしてドアノブを回すと、鍵が空いていた。

絵里香はそっと中に入って行った。


伊庭の脳裏には、恭子と紡いで来た7年間の想い出が次々と蘇って来る。

その目に映るのは恭子の姿ばかりである。

伊庭はフローリングの床の上に座り、頭を抱えて苦しみ続けていた。

最愛の婚約者を喪った深い哀しみが傷みとなって容赦なく伊庭を襲っていた。

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