第25話

伊庭は一言も絵里香を責めなかった。

絵里香には、それが余計に苦しかった。

まだお前のせいだと罵られた方がマシだった。

伊庭の態度は恭子が生きていた時と何の違いもなかった。


伊庭は絵里香のマネージャーとしての仕事に没頭していた。

家に帰って一人になった瞬間から苦しみが襲って来る。哀しいというものではない。心がねじ切れそうな痛みだ。

伊庭の憎しみは、絵里香ではなく、欲望で恭子を襲った男にある。

犯人は今、警察が追っているが依然として見つかってはいない。

伊庭はオフが来るのが怖かった。

自分自身を保てる自信がなかったからである。

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