第71話

やって来た先は高級マンションだった。

コンシェルジュこそいないがセキュリティはしっかりしている。

住人番号を押してOKならロックが開いて玄関から奥に進む事が出来る。住人は専用のカードがあり、それを通して奥に入る仕組みだ。

こうして20階に着くと暖希の部屋があった。

1LDKで既に家具も揃っていた。


広いリビングは20畳程もあるだろうか。

窓から見える夜景が美しい。

「気に入りましたか?」

塩井に声を掛けられて暖は漸く我に返った。

予想外の素晴らしさに、夢見心地だったのである。

「こ、此処に住んでいいの?」

「勿論です。足りない物があったら何でも仰って下さい」


「何だかポッカリ穴が開いたようだね」

長谷部が焼き魚を口に運びながら言った。

「暖ちゃんがいないと寂しいよ」

瑤も後に続く。

いつもの朝食も椅子が一つ空いているだけで何だか寂しい。

心結は黙々と食事をしていた。

「お母さん、誰か来るって話はないの?」

泉野が口を開いた。

「春になれば誰か来るだろうね」

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