第62話

締切が近くなると、泉野は完全に部屋へ閉じこもる。

夕食は大家が部屋のテーブルに置いておく。

今日はまだ朝から5行しか打てていない。

編集の山南がやって来た。

「進んでいませんね。ホテルで缶詰めになりますか?」

「いや、俺は何処よりもこの部屋が一番落ち着くんだ。ファミレスに連れて行ってくれ。気分が変わるから」

「エリーゼルでいいですか?」

「ああ」


「お母さん、ちょっと気分変えて来ます。ご馳走さまでした」

泉野は台所にいた母親にお盆を渡した。

「おや、全部食べてるね。これなら大丈夫だ

よ」

こうして泉野は山南と一緒に車でファミレスに向かった。

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