第61話

「下宿なんですか?」

「そう。大学の時からもう6年」

長谷部は佳奈に話をしていた。

「小説家に俳優に料理人の卵、大家さんに大家さんの娘」

「何か映画みたい!」

佳奈は目を輝かせている。

「俺の家族みたいな人だからちゃんと紹介したくて」

「お土産はケーキでいいですか?」

「みんな喜ぶよ」


「辻本佳奈です。長谷部さんとお付き合いしています。よろしくお願いします」

「まあまあ!さくら荘へようこそ。大家の佐倉です。ここに居るのは小説家の泉野、俳優の春名、料理人の卵の馬場、そして娘の心結。宜しくね」

「よろしくお願いします」

「じゃあ、行こうか。佳奈さん」

「はい」

こうして、長谷部と佳奈は2階へ上がって行った。

「初々しいなー」

泉野が早速口を開いた。

「可愛い子やん!」

瑤も後に続く。

「真ちゃんによく似合っているよ」

暖希はそう言って笑った。

「今度は千鶴さんの時みたいにならないといいけどね」

大家が心配気に言った。

「大丈夫ですよ。お母さん」

泉野が安心させるように笑顔を見せる。

「千鶴さんって?」と瑤が訊く。

「真ちゃんの大学時代の彼女だよ。真ちゃんがいたのに裏で友達とも付き合っていてね……辛い思いをしたんだよ」

「そうだったんですか」

「でも佳奈ちゃんは優しそうないい子じゃないか」

泉野が口を開いた。

「菜々緒ちゃんみたいに長続きして欲しいね」

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