第49話

映画は好評だった。

暖希には初めてCMの仕事が来た。

保険会社のCMである。

「今の保険で満足していないあなたに朗報です…… 」

柔らかな雰囲気の中で案内をしている暖希は見知らぬ人のようだった。

心結はそれをぼんやりと見ていた。

「暖ちゃん、ここ出て行っちゃう日も近いかもね…… 」

母親がテレビを見ながら言った。

「うん……そうだね」


「うわぁ!カッコいい。写真映りいいよね。実際よりカッコ良く見える」

暖希が表紙を飾っている雑誌を見て奈緒が言った。

「実際だってカッコいいよ」

心結がムッとしたように言った。

「心結は彼が好きだからカッコ良く見えるの」

書店に、ズラリと並ぶ雑誌の中に暖希の顔がある。

彼はもう……スターなんだ。

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