第43話

「泉野さん、夜食作ったんで如何ですか?」

「あれ?新入り。気が利くじゃん。暖ちゃんも呼ぶから2人分頼む」

「はい」

まもなく、暖希と泉野が揃って台所にやって来た。

目の前に出されたのはシーフードと野菜のリゾットである。

「美味そう!」

「泉野さんはいつから小説家を目指しているんですか?」

瑤がそう言うと、泉野は顔を上げて瑤を見た。

「泉野さんはなし。泉ちゃんでいいよ。暖の事は暖ちゃんで」

「はい」

「しかし、このリゾットトマト仕立てでスゲー美味い!って俺の事だっけ?」

「はい」

瑤は笑いを堪えている。

「小学校1年の時、作文を褒められたのがきっかけで書くようになった。友達に書いた話を見せるとみんな続きを見たがるんだ。だから得意になって書いてた。大人になっても夢は変わらず。俺は小説家になるよ」

「何か……凄いですね」

「あー敬語もなし。でも瑤だって料理人になるって夢があるじゃん。このリゾットだって夢の一つだろう?」

「俺は将来洋食レストランを開きたいんです。じゃなくて開きたい」

「いい夢じゃん!俺ら食べに行くから予約しといて」

暖希はそう言うと笑顔を見せた。

「はい!」

そして3人は笑った。

「暖ちゃんは?いつから俳優になりたかったの?」

瑤が暖希に話を振って来た。

「俺は15の時。ウチの近くでロケがあってさ

……初めて生で演技を観たんだ。鳥肌が立ったよ。身体中が震えてた。それから俳優になるのが夢になった。親に相談したら高校卒業してからならいいって言われて、卒業と同時に上京した。オーディションに受かってタイムプロに入ったんだ。そしてさくら荘に来た。それから劇団での稽古とオーディションを受ける事が俺の生活。後はバイト」

暖希はそう言うと、満足そうにリゾットを食べた。

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