第33話

何事があったのかと思いながら、暖希は劇団の扉を開けた。

「ああ、暖希、来たか。此方へ」

直ぐに別室に移動した。

「実はな、あのオーディションを谷川慎之介が見に来ていたんだ。それでお前が谷川の息子役にイメージがピッタリだと言うんだ。だからお前には2週間後のオーディションを受けてもらう事になったから」

「谷川慎之介って……あの」

暖希は余りの驚きに言葉が出て来ない。

「暖希、こんなチャンスは滅多にない。必ずモノにしろよ」


谷川慎之介は数え切れないほどの映画やドラマに出演し、ハリウッド映画にも出演した演劇界の大スターである。

その人の息子役になれるかもしれない……


「凄いじゃないの!暖ちゃん!」

大家他一同は、その話を聞いて目を丸くしている。

「まだ決まったわけじゃありません。オーディションを受けてみないと」

暖希は弾む気持ちを、何とか抑えようとしていた。

「うんにゃ、もう決まったようなものだよ。暖ちゃん良かったな」

「暖ちゃん、浮かれてオーディションで失敗しないようにね」

心結は心配気に言った。

「谷川慎之介がオーディションに来ているかもしれないよ」

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