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  ずうっととおくのほうから


とぉぉぉぉん……  とぉぉぉぉん……


 と、かねおとこえてきました。


 時計とけいは1151ふんしていて、もうすぐ真夜中まよなかです。


 リリは図鑑ずかんじてつくえ一番いちばんおおきなしからポンチョコートをしました。


 リリのからだにはいにおおきいようにえますが、かぶるようにしてうでとおすとちょうどすそがくるぶしくらいまでれててとってもぴったりです。


 リリはこののために半年はんとしまえから準備じゅんびしてきました。


 そらあおくなくなったのも、星屑ほしくずのようにあわひかくすりも、全部ぜんぶいていただけだったんです。


 リリは大人おとなたちをこさないように、ゆっくりとまどけてしました。


 二階にかいとはいえ地面じめんまではかなりたかかんじられました。


 リリはついまどからりました。


 どすん!


 と、地面じめんときおもったよりもおおきなおとてしまいましたが、気付きづかれたかどうかなんてにする余裕よゆうはありませんでした。


 くらまちけていくリリはいままでで一番いちばん、めいいっぱいはやはしりました。


 リリはようやくしたんです。


 リリはやっと自由じゆうになったんです。


 リリはもうどこにだってけるんです。


 でもリリは全然ぜんぜんまよいませんでした。


 したら、まず一番いちばんくところをめていたからです。


 あのとうです。


 ちいさいころからきだったあのとうです。


 あのとうなかおおきな書庫しょこくと、ずいぶんまえからめていました。


 あのおおきな書庫しょこ禁止きんしになったくらいから、もうめていました。


 ってはいつけなかったのか、脱走だっそう気付きづかなかったのかることはなく、リリはとうのふもとの広場ひろばにたどりきました。


 それにしてもおおきなとうです。


 すぐちかくで見上みあげるのとあのいえ屋根やねからるのとでは大違おおちがいです。


 でもここで、ここまでたのに、リリは途方とほうれてしまいました。


 半年はんとしまえから準備じゅんびしていたのに、禁止きんしとうにどうやってはいるのかかんがえていませんでした。


 たりまえなのに、たりまえすぎて気付きづかなかったんです。


 いずれにしろリリのようなこどもはここにいてはいけません。


 すぐにかくれるか、げるかしないと、あかをしたひとたちにつかまってこわにあわされてしまいます。


 しかしリリは幸運こううんでした。


 いつもは不運ふうんですが、今日きょうだけはラッキーガールでした。


 ちょうどいい位置いち通風孔つうふうこうふたはずれてぶらがっていました。


 大人おとなひととおれそうもないけれど、これくらいならリリはとおれます。


 途中とちゅうでポンチョコートのすそっかかったので、ちかいっぱいったらふたちてしまいました。


 がちゃあぁぁん! と金属音きんぞくおんしずまりかえったまちひびいていきます。


 ものすごくびっくりしました。


 リリはあんまりびっくりしぎたときには、”たとえ”が意味いみをなさなくなるんだということをりました。


 からだうごきません。


 みみませてみます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 リリはいそいでとうなかあしをしまいました。


  

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