第11話 インフルエンザ濾胞について

 インフルエンザが爆発している。

 コロナ全盛期の時はほぼゼロだったのに。

 やはりマスクをしていない人が増えたからだろう。


 また、一時的に下火だったコロナも増えつつある。

 第12波になるのかな。

 先日に会った開業医の先生は毎日がインフルエンザ地獄だと言っていた。



 さて、インフルエンザといえばこんな話題がネットに出ていた。


「あるクリニックを受診したら、医者は喉をチラッと見ただけで『はい、インフルエンザね。お薬だしておきます』と言いやがった。ちゃんと検査してくれよ」


 この患者の気持ちは分からないでもない。

 迅速診断キットか何か「ちゃんとした」プロセスを経て「どうやらインフルエンザのようですね」みたいな形で診断名を告げて欲しかったのだろう。


 が、オレに言わせれば「はい、インフルエンザね」の方が遥かに名医だ。


 インフルエンザに感染すると初期から咽頭後壁に influenza follicle(インフルエンザ濾胞ろほう)というものが見られる。

 イクラのような粒々が喉の奥にポツポツと張り付いているのだ。

 こいつがあれば感度 95.4%、特異度 98.4% でインフルエンザだとされる。


 一方、迅速診断キットの感度は50~70%、特異度が90%以上ということなので「イクラ」に劣ってしまう。


 感度というのは病気の人を「病気だ」と診断できる確率。

 特異度は病気でない人を「病気でない」と診断できる確率。

 両方とも100%に近いほど、その所見や検査が正確である事を示す。

 だから、たとえ迅速診断キットで陰性と出てもインフルエンザの存在を否定する事はできない。


 なので、発症から12時間以上経った上で綿棒を鼻孔に突っ込み、その綿棒を試薬に吸収させ、そいつをテストデバイスに入れてから15分ほど待たなくてはならない迅速検査キットよりも、数秒の視診で済むインフルエンザ濾胞の方が優れている。


 インフルエンザ濾胞に1つ難点があるとすれば、担当医が患者の口の中を覗き込むときにインフルエンザをもらってしまうリスクがあるくらいだ。

 とはいえ、患者は担当医の感染リスクなんか気にしていないだろう。


 ちなみにインフルエンザ濾胞というのは日本の一般開業医が自らの経験から提唱した診断法だったと記憶している。

 まだまだ世界に普及するには時間がかかりそうだけど。



 あと、インフルエンザ濾胞と迅速診断キットの感度・特異度などは ChatGPT を用いて調べたが、日本語で質問するのと英語で質問するのでは、回答の精度が大きく異なっていた。

 この項目に限って言えば、英語でのやり取りの回答の方が詳しかった。


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