第10話 難解症例のAI診断

 ふと思いついて、昨日の症例を ChatGPT ならどう診断するのか、それを試してみた。

 症例の経過の中で、以下の部分を入力した。

 念のため再掲しておく。


*****(入力部分 開始)*****

 症例は60歳の男性。

 主訴は息切れ。


 本人の職業は理学療法士で生来健康だ。

 1ヶ月ほど前から息が切れるようになった。

 そして、座っていて立つとふらっとする。


 で、便が黒くなっているのに気づいた。

 いつの間にかヘモグロビンが6前後になっている。

 当然の事ながら消化管出血が疑われ、勤務先の病院で上下内視鏡(胃カメラ+大腸内視鏡)をしてもらった。

 しかし何も異常が見当たらなかった。


 これとは別に咳が続くので胸部レントゲンで結節影が見つかった。

 担当医によれば、腫瘍性のものか結核を含む炎症性のものだろう、と。

*****(入力部分 終わり)*****


 で、途中はすっ飛ばして ChatGPT による鑑別診断は以下の通りだ。


【鑑別診断】

1. 消化管出血を伴う疾患

・小腸出血

 内視鏡で確認できなかったのは、小腸が原因である可能性。カプセル内視鏡や小腸造影CTなどを追加検査として考慮すべき。

・血管異形成(特に小腸のアンジオディスプラジア)

 高齢者での見逃されがちな原因。

・腫瘍

 小腸腫瘍(例:腺癌や消化管間質腫瘍〈GIST〉)を考慮。

2. 胸部結節影を伴う疾患

・悪性腫瘍

 原発性肺がん(例:扁平上皮癌や腺癌)

 転移性腫瘍(小腸腫瘍からの転移も考慮)

・感染性疾患

 結核(慢性咳嗽と結節影)

 真菌感染(免疫抑制がない限り可能性は低いが考慮)

3. 全身性疾患

・炎症性疾患

 サルコイドーシス(胸部結節影を伴い、小腸に病変がある場合も)

・血液疾患

 鉄欠乏性貧血(二次的に消化管からの慢性的な出血)

 骨髄異形成症候群(腫瘍性病変や貧血と関連)

4. その他の可能性

・パラネオプラスティック症候群

 腫瘍に伴う全身症状としての貧血や咳。

・自己免疫性疾患

 Vasculitis(血管炎)による多臓器病変。


 可能性のある疾患を網羅的に並べたという印象だ。

 あまりメリハリがない気がする。


 ChatGPT のまとめは以下の通り。


【仮説】

 現時点では、小腸出血(例:腫瘍または血管異形成)を基盤とし、肺部の結節影が独立した病変(腫瘍または炎症性)である可能性が高いです。両者の関連を調べるため、全身的な検索が必要です。


 この時点では肺癌の小腸転移という事を ChatGPT は想定していないみたいだ。

 その後、腫瘍マーカーの数値や経過などを入力して ChatGPT とやり取りを行った。

 最後に以下のような返事が返ってきた。 


【最終コメント】

 臨床ではすべての可能性をリアルタイムで網羅することは困難ですが、このようなケースの経験が将来の判断をより迅速かつ適切なものにしてくれるはずです。共有いただいたケースに感謝します。

 引き続き臨床の最前線でのご活躍をお祈りしております!


 今回の症例では、ChatGPT はなかなか正解に辿り着くことはできなかった。

 が、その事をもって「やっぱりAIは無能だ」というのは違っていると思う。

 ChatGPTは、色々考える時の頼もしい相棒という位置づけが正しいんじゃないかな。

 人に対しても AI に対しても、敬意をもって接するべきだろう。




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