第22話 転生したいでござる

 家に帰ってからは家族と食事を取り、風呂や歯磨きを終えた俺は自室に戻って携帯画面を開く。そして大和田にメッセージを送った。


「大和田がこの前言ってた意味わかったよ」


 すぐに既読が付いた。その間わずか1秒。


「さようでござるか。 まったく、ハカセ殿は本当に鈍いでござるな」


 相変わらず大和田は既読がついてからの返信の速度も速い。


「それで、結果は?」

「必要なカードを揃えて、その後は買い物に付き合わされたな」

「自分が聞いているのは結果ですぞ」

「結果?」

「有栖川殿との関係でござる」


 ……大和田が意図的に二人だけにしてくれたのは俺と有栖川に気を遣ってくれていたわけである。俺はフードコートでカップルを見るまでそれに気づかなかったわけだが。しかし、そもそも俺と有栖川はそういった関係ではない。大和田の気配りは空回りだった。


「別に何もない……最後は月ヶ瀬先輩が来たけど」

「まさかの泥沼展開⁉」


 大和田が怯えた顔のスタンプを送って来る。なんだよ、泥沼展開って。


「俺と有栖川、それに月ヶ瀬先輩はただの部活仲間だからな?」


 大和田から憐れむような顔のスタンプが送られてくる。何が言いたいんだこいつは。


「話は少し変わるのですが、自分もカードゲーム部を作ろうとしたのですよ」


 おぉ、そうなのか。俺はビックリマークのスタンプを送る。


「けど、ダメだったでござる」


 涙を流すキャラクターのスタンプが続けて流れてきた。そしてすぐに大和田から電話がかかってくる。文字を打つのが面倒になったのだろう。俺はベッドで横になりながら電話に出る。


「ハカセ殿は一体どのようにして部活を作ったので?」

「俺が作ったわけではないからなぁ……月ヶ瀬先輩が始めた部活で、先輩が校長の孫だから、権力で押し切ったって聞いてる」

「やはり権力こそ全てですな……」


 大和田は部活の活動内容、メンバーなど全て揃えた状態で教師に希望を出したらしい。俺が通う高校と違って生徒会を仲介としないようだ。


 大和田の話を要約すると彼の通う高校も進学校、教師陣からはカードゲームは部活としての意義や優位性がないと判断されて認められなかったそうだ。今の時代、ゲームやカードでもプロと呼ばれる人々が現れているが……まだまだ進学校の教師の頭は固いのかもしれない。


「ハカセ殿が羨ましいでござるよ~!」


 涙を流していそうな声で大和田が電話越しに叫んでいた。


「大和田も俺と同じ学校に通っていればな」

「もし過去に戻れるなら、中学の自分を殴ってでもハカセ殿と同じ高校を受けさせたでござる」

「県内でも屈指のエリート進高校に入学した奴の台詞とは思えないな」

「青春と学業を天秤にかけるなら自分は迷わず前者を取りますぞ」


 成績優秀があだとなった悲しい事象である。ドンマイとしか言いようがない。

 これ以上は大和田の傷を舐めるだけなので俺は話題を変えて当日の有栖川が神引きした事、月ヶ瀬先輩が大会で優勝した話を寝る直前まで大和田と交えた。そして週末は終わりを迎えるのであった。

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