大きなカバン

とある不動産屋にお客がやってきた。

お客は大きなスーツケースを持っている。




「いやあ、本当に助かりましたよ。実はこのカバン、とてもとても重くてね。少しの段差でも乗り越えられないんですよ」




そう言いながらお客は応接用のソファに腰掛けた。




「すまないが、少しトイレを貸してもらうよ。何せ自由にトイレにもいけないものだからね」




お客はカバンを指差し「こいつのせいでね」と一言添えて部屋を出た。




俺は今でこそ不動産屋のいち営業マンだが、高校、大学とラグビーでいいところまで行った。幾分か鈍っただろうが、それでも腕力には自信がある方だ。




少しくらい、という気持ちでスーツケースの持ち手を立て、右腕に力を込めて持ち上げる。しかし俺の予想に反してスーツケースは微動だにしなかった。




今度はスーツケースを抱え、腕だけでなく脚と腰でも持ち上げようとする。しかしそれでもこいつはびくともしないのだ。




俺は試しにスーツケースの持ち手を伸ばし引いてみる。力を込めれば案外素直に動くではないか。




そうなると、次は「このままどこまで行けるのか」が気になる。俺は軽い気持ちで応接室を出て、試しに建物の外まで行ってみる。




充分に動かせることを知って満足した。さて戻るか、と踵を返して気がついた。出るときは気づかなかったが事務所の入り口にはほんの小さな段差があり、この重すぎる相棒はどうやってもそちらへ戻ろうとはしないのだ。




改めて見ると街は八方様々な道がある。しかし俺はもう迷うことはない。進むべき道は、この相棒が教えてくれる。




俺は今、とてつもなく自由だった。






……なんかこんなような話を見たことがあるんです。たぶん、教科書とかで……。

どなたか、タイトル分かる方いらっしゃいませんか?🙇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る