Part7
まず向かったのは、先程看守らが現れてきた左の道だった。床に広がる血液の上を歩き、その先へ向かう。
道は左右2手に別れていたが、右の道は扉に封じられていた。それにはカード式らしいロックがかかっていたため、『開かない扉を爆破するのは最後だ。先に開くところを探そう』という朱鷺の指示に従い一度後回しにして、突き当たりの壁が見える左の道へと歩く。
そちらにも扉はあった。壁に突き当たって右側。壁や床と似た雰囲気の、白いスライド式のもの。
「お、開いた」
それは蓮也らが近づくと抵抗もなく自動で開き、侵入を許した。
その中には、地底下1階で見たような3段ベッドが並べられていた。しかし部屋の大きさはそれよりも格段に大きく、NRFの生活部屋を彷彿とさせるような空間だった。
ただ、ベッドの数が異様に多く、広大な空間はほぼベッドで埋め尽くされているようなものだった。
『多分、看守はここで寝てるんだろう。んで、ベッドの数を見るに、きっと看守はさっき戦ったので全部だと思う』
朱鷺はボディカメラから部屋の情報を認識し、2人にもそこから得た知見を共有する。
しかしそれ以上の収穫もなければ地上出口も見当たらず、部屋を出るのだった。
次に向かったのは、エレベーターから見て右側の道。
その道には2つの扉があり、その両方を見て回った。片方は銃火器やマガジンなどを収納しておく場所で、もう片方は集めた個人情報を収集しておく場所だった。
『蓮也、爆薬には余裕あるよな?』
「? ああ、少なくとも10はある」
そんな部屋達を捜索していた際に、朱鷺は蓮也に問いかけた。その返答を聞き、こう指示を与えた。
『じゃあ、両方の部屋を爆破しておけ。今回で完全な壊滅を目指すわけではないが、なるだけダメージは負わせておきたい』
確かに、ここで武器を全て壊せば大損害である。それに加えて情報を潰しておけば、詐欺に利用されたり、構成員の家族への報復に巻き込まれたりすることによる一般人の被害なども防ぐことができる。
蓮也はそう納得し、一応臥竜に明花を背負ってもらい、両方の部屋を手際よく爆破した。
念の為2つ爆薬を使ったことで室内は黒焦げになり、銃火器を仕舞っていた部屋は内部のグレネードとでも連鎖したのか、扉も吹き飛び、金属製の棚も原型を留めないほどになっていた。
一瞬この建物ごと崩れたりするのではないかとも思ったが、案外不安は現実にならないものなのだった。
蓮也らは変わらずの健康体で、探索を続行した。
して、地上出口は見つかっていなかった。
『じゃあ、ひとまず正面の扉も確かめてくれるか?』
残る道は、エレベーターを降りて真っ直ぐの道。相変わらずの真っ白な扉に秘された道だった。
そこは廊下が左右に比べてかなり短く、すぐに扉に触れることができた。
しかしながら、ドアノブすらない扉を押そうと引こうと、開くことはなかった。人間の腹ほどの高さの左側に設置された黒い四角――恐らくはカードキーをかざす場所――が、「鍵を持ってこい」とでも言い放っているようだった。
『まあ、そう簡単に開かないよな……とりあえず、この扉から爆破してみよう。それで無いようであれば、左の道に戻る』
「分かった。じゃあ……行くぞ?」
2人はその指示を聞き入れ、蓮也は臥竜へ明花を預けて爆薬を取り出す。
地面に落とした後に後方へ離れ、いつも通りに煙と爆音を放ちながら爆発した。
その衝撃によって、予想通り扉は壊れた。
そして、その向こうに。
「……! あの梯子って……!」
上へ登るような梯子があった。それは、ほぼ確実に地上への出口だった。
『良かった……じゃあ、一旦そこから地上に上がってみてくれ。出た後の景色を送ってくれれば、恐らく場所も分かるはずだ。そこに車両を向かわせる』
朱鷺は今後の動きについても簡潔に説明し、最後に『最後まで警戒は忘れずにな。まだ作戦は終わってない』と釘を刺した。
「……よし、行くか」
「うん。後ろは私が見とくよ」
2人はそう言葉を交わし、正面の扉へ歩き出した――
――その視界の左端から、黒閃が走った。
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