Part2
「今回の任務は、リベリアーズ地上拠点破壊任務だ」
リベリアーズ。
この地下において、NRFに次ぐ戦力を有する集団。
そして、NRFにとっての排除対象でもあるため、NRFは定期的にこうした任務を行っていた。
何故排除しなければならないかと言えば、単純明快。奴らの活動の目的は、NRFの妨害及び壊滅だからだ。その達成のため、奴らは地上に拠点を設置している。付近を常に何人かとドローンが監視しており、その視界に写ろうもんなら、即座に邪魔が飛んでくる。
だからこそ、NRFはリベリアーズの地上拠点を破壊していたのだった。
「うぇ……人殺すのやだよぉ……」
所属して2年目、ある程度任務の内容が想像できた唯織は、更に姿勢を崩して息を吐いた。
しかし、その隣の蓮也の面持ちは違っていた。
「……いつ…いつやるんだ?早く詳細教えろ」
今年入隊したばかりでこの類の任務を経験したことのないはずの蓮也は、不意にそんなことを言った。先程までは親友だった椅子の背もたれとも縁を切り、やや前のめりがちに、いつになく真剣な目で朱鷺を見つめる。
リベリアーズという組織に、そして、この任務に何か特別な思いがあるかのようだった。
ちなみに、いつの間にか羽瑠は横の席に放置されていた。邪魔だもんね。しょうがない。
「……じゃあ早速詳細を説明する」
朱鷺がそう言うと、部屋が暗転した。
そしてすぐ、スクエアテーブル上に映像が映し出された。
それは天井の小さな装置から発せられた光で、砂漠を上空から俯瞰した写真のような物だった。
「まず、これが今回破壊する基地となる。ここに搬入車用の入口があって、これともう1つの扉が、この基地の出入口だ」
朱鷺がそう言って指し示したのは、辺りを鉄柵に囲まれた、ひとつの建物群。テントがいくつも並べられ、物資をまとめたのであろう箱の山も確認できた。これこそ、リベリアーズの地上基地であった。
搬入車用の大きな扉はその北側にあり、人の出入りのためであろう扉は、南側に設置されていた。
「そして、侵入はこの小さな扉の方から行う」
朱鷺は、南側の扉を指で示した。
「次に、実際の動きについて――」
その後、朱鷺は写真を元に説明を始めた。
内容は至ってシンプルだった。
まず、未だ日の見えぬ暗夜の内にリベリアーズの基地付近へ接近する。その後、警戒ドローンの破壊を合図に基地内へ潜入。リベリアーズの人間を殺害しながら爆薬を仕掛け、最後に爆破する。
「それじゃ、任務は明後日の午前に行う。それに伴い、明日の午後11時にはエレベーター前に集合するように」
当たり前の事実のように語る朱鷺であったが、実際やるのは殺人。当然、奴らも銃火器を所持している訳で、反撃のリスクだってあった。
ただ、ニーロ相手だって、リスクがあるのは事実だ。しかしながら、人というのは、一般的なニーロよりも遥かに知能が優れている。
そのことだけで、任務の難易度は跳ね上がっていた。
「簡単に言うけど……生活リズム変えるのって結構めんどくさいんだよ?」
まあ、こう言った唯織を含むリーテン・フォーゲルにそんな不安は無かったのだが。
ここに入隊して2、3ヶ月も経てば、どんな人間もこうなってしまうのだった。
「んだと?明日はお前らが忌み嫌う訓練を早めに切り上げて寝させてやるというのに……」
「いや、いきなり寝ろって言われても難しいんだよ。体内時計ってやつのせいでさ」
こういった深夜に行われる任務では、隊員のパフォーマンスへの影響を考え、任務の数時間前から仮眠の時間が与えられる。
ただ、それは真昼間から始まる。普段から健康的な生活習慣を身につけさせられているNRF隊員に対しては、あまり効果が出ていないのは事実であった。
「分かったからさっさと訓練所行ってくれ。今日は時間的に筋トレからでいいから」
現在時刻は7:35だった。
「やだーもうちょっといるー」
「子供じゃねぇんだから……!早く行くぞ!」
「やめろー!横暴だー!職権濫用だー!セクハラだー!」
唯織は必死の抵抗も虚しく、脚を肩に担がれ訓練所へ運ばれるのだった。
「さて、俺ももうちょい寝てるかな……」
「お前らも行くんだよ!!!!」
唯織の代わりに金属バットを携え、早すぎる仮眠タイムに入った3人に殴り掛かる朱鷺であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます