Part5
訓練所を抜け食堂を横目に歩いた先、扉があった。
その横に設置されたパネルに腕を当てると、それは朱鷺の通過を許した。
その先は、地上エレベーターの昇降口だった。先の喧騒とは異なり、無音の無機質な空間。周りを見れば、幾つかの棚が並び、中には銃火器や弾薬、爆薬類が保管されている。この部屋は、地上へ向かう前の準備室という役割も持っていた。
そして、この部屋には巨大な鉄扉があった。如何なる者も通さんと構える鉄扉に見える所々の錆は、寧ろその迫力を増長していた。
これぞ外側から見た地上エレベーターの扉だった。
嫌な金属音が部屋中に響いた。
鉄扉がゆっくりと開きつつあった。重苦しい部屋に徐々に光を漏らし、やがてそれは完全に開き切った。
中にいたのは、重症を負った人間達であった。
「はぁ……まーた派手にやってくれたね……」
朱鷺はそう言うと、エレベーター内に立つ少年少女を見やる。
「あはは……いやー………頑張った証ってことで?」
眼を覆うように包帯を巻いた少年が言った。
「生き残っただけ凄いと思ってくださいよ!本当に大変だったんですからね!?」
背に少女を背負い、腕に裂傷を刻んだ少女が言った。
〔こっちは取りたくて左手取ってるんじゃないんだぞ〕
左手首から先を失った少年の、右腕に取り付けられた装置から声が再生された。
「うぅ……おなか痛いぃ……」
少女に背負われ、横腹の部分だけ異様な損傷を見せる装備の少女が言った。
またしても個性的な4人だった。そして同じく、彼らの胸にはNRFの紀章があった。
4鳥の中でも鷹を強調したデザイン。
それは、NRFにおける最高クラス、〈ファルク〉に所属する隊員のものだった。
「分かった分かった。とにかく、さっさと医務室行ってこい。喜んで迎え入れてくれるぞ。きっと」
「はぁ……でしょうなぁ……」
背中の負担からか、若干脚が震えている少女が言う。
「んじゃ、今日はお疲れ様。後で報告しといてね〜……」
朱鷺は4人にそう言い伝えると、地上エレベーターの正面にある、NRF本部エントランスに繋がるこれまた巨大な鉄扉を開けてその部屋を去るのだった。
(そろそろ、『あの任務』に取り掛からないとな……しかし、蓮也達にできるかねぇ……)
朱鷺はそんな思考を抱えていた。
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