あの頃のMerryChristmas

***


地球に転移したばかりの四天王たちのほのぼの話。アスイール視点、全1話。


***



「じんぐるべーる、じんぐるべーる、すっがーなるー♫」

「……」


 このワケのわからねェ世界にオレたち、『魔王軍四天王』が転移してから数ヶ月。冬を迎えた街は突然、妙に慌ただしくなった。どうやら人間どもの暦上、重要視されている祭日──『クリスマス』ってヤツが近づいているらしい。


 今や毎日のように街中で耳にするその歌の内容を訂正したのは、我らが四天王のリーダーを務める鬼男だ。


「はは! ガルシ、鳴るのは『鈴』だ。スジが鳴ると、たぶん痛いぞ」

「あ……そうなんですね。ありがとうございます、メラゴ」


 妙な解説が付随しているその訂正に、弟分──ガルシが律儀にぺこりと頭を下げる。クセとボリュームたっぷりな金の前髪がさらに垂れ、目元を完全に隠した。


「なんか街もキラキラしてるわよね。『クリスマス』って、そんなにすごい祭りなのかしら。街で一番強いやつを決める武闘大会みたいなもん?」

「きっとそうだろうな、キティ! 久しぶりに暴れられそうだ」


 ホームセンターで買ったミニツリーを飾り付けつつとんでもない誤情報を発信する戦闘狂どもに、オレは思わず呻いた。お前らはオレと同じく外で働いてる──メラゴは建設現場、キティリアはモデル業。ちなみにオレは外回りが主なサラリーマンだ──くせに、どうやったらそんな奇天烈なエビデンスを仕入れてくるんだよ。


「お前らな……」


 とはいえ、そういう魔族寄りの物騒な思考を人間準拠のものへ修正していくのがオレの役割ってもんだろう。そんなわけでオレはちゃぶ台の前でひとりシャツの腕を組み、クソ狭い1DKを独自のセンスで飾り立てている仲間たちを見上げた。


「この国中のヤツらが注目する行事だ、正しい認識を持っておく必要がある。いいか、よく聞け。クリスマスってのは──」

「サンタクロースさんが、プレゼントを届けに来てくれる日ですよっ!」


 人の話を滅多に遮らない内気な弟分が、珍しく興奮気味に割り込んでくる。そのあとすぐにガルシはしまったという顔でこちらを見たが、オレはうなずいて先を話すよう促した。外界との接触が得意ではなく、いまだこのアパートに引きこもっている弟分の認識は正直気になるところだ。


「さんたくろーす? 誰なのよ、そいつ」

「クリスマスの夜、いい子にしている子供たちの部屋に来て、その子が望むプレゼントを置いてくれる人です。世界中の家に、そうするんですよ」


 ガルシの説明は的確で、オレが仕入れた知識とも相違ない。『剛魔族』が誇る魔術への抵抗力のおかげで、オレの『言語超越の術』──異国の言葉や文字を瞬時に理解できる術だ──にかかりにくい弟分は、たまに幼児向けのテレビ番組なんかを観ている。おそらくそこで得た知識だろう。


「それはすごいな! 仕事で知ったんだが、この国の住居はどこも城並みに防備を固めているぞ。それらをかいくぐり、気づかれずに物資を設置して脱出するとは。サンタクロースという人物は、相当な手練れだな」

「ふーん。いいわね、ソイツと戦いたいわ! 人間の仕事は嫌いじゃないけど、身体が鈍るもの。どこかの家から出てきた所を捕まえましょうよ」


 純真な子供の夢を血塗られた宴へと変えようとしている馬鹿どもに、オレは日課となっているため息をつく。このままだと当日、赤い衣服を着て髭が生えている人間たちがもれなく悲劇に見舞われる。


「だ、だめです! メラゴ、キティ、そんなこと言っていると──サンタさん、うちに来てくれなくなりますよ!?」

「……ん?」


 丸太みたいな太腿が引っかかり、ガチャンとちゃぶ台を揺さぶる。しかしガルシは気にも留めず、わずかに覗いた金の瞳に強い光を宿して計画者たちを射抜いた。同じ色の太いタレ眉が、珍しく天を向いている。


 オレはもしやと思い至り、弟分に問う。


「ガルシ。もしかしてお前、サンタがここにも来ると思ってんのか?」

「はぇっ!? え、え……と」


 きょとんとしている他ふたりからの視線も集めてしまい、オレたちの中で最も若い──それでも三百歳を越えているはずの魔族は、もじもじと巨体を揺らして言葉をこぼした。


「や……やっぱり、だめですよね。来てくれたらいいって、思いましたけど」

「……。なんで来ねえと思うんだ?」

「だって自分、魔族ですし。この世界の、生まれでもない。それに」


 アパート内でもこの国の言語で話すよう訓練している関係でまだ少したどたどしい言葉が、弟分を妙に幼く見せる。魔界で四天王の一角を担っていた時は迫力満点だった『地底筋肉』の横顔は今や、街中を浮かれ歩く子供たちと変わらないように見えた──違うのは、その表情が暗く沈んでいることだ。


「それに、自分は……」


 豪奢な魔王城とは比べ物にならないほど粗末で薄い、壁の向こう。プレゼントを求める人間たちが蠢く商店街から、クリスマスソングが聴こえてくる。


『サンタクロースが やってくる みんなの家へ やってくる』

「……」


 部屋に満ちた沈黙に耐えきれなくなったのか、ガルシは「洗濯物、とってきます」と言ってそそくさと狭い廊下へ逃げ出していった。そのデカい背中を見送り、オレは残った魔族たちへと振り向く。


「今しがた、緊急で重大な『作戦』が発生した──わかってんな、テメェら?」


 紅とピンクの瞳が、内容の確認など不要とばかりにきらりと輝く。オレたちは無言で拳をぶつけ合い、それぞれ情報収集のために街へと散った。





 クリスマス当日──夜。『作戦』は問題なく決行された。


 単純な話だ。オレが幻影魔術でサンタクロースってじじいに化ける。服の細かいディテールは、図書館で絵本を漁ってきたキティリアに任せた。さらに漏れ出る魔力でオレだと気づかれないように、メラゴがオレの身体を覆うサイズの薄い高位結界を張る。これで見た目はただの人間、ふくよかなサンタクロースの完成ってわけだ。


──で。


「サンタさん! さあ、どんどん召しあがってください!」

「お……おう。じゃない。うむ、ありがとうガルシ君」


 おい。どうしてこうなった?


 オレは胸の前でもじゃもじゃと波打つ白ひげを撫でつけつつ、こたつの中で伸ばした足で向かいのリーダーを小突いた。だが日頃鍛えてるだけあって、鬼は微動だにしない。それどころか特上の笑顔なんかを浮かべてやがる。


「ははは、どうしたんだサンタさん。眉間に青筋が走ってるぞ」

「うふふ、たぶんまだ寒いんじゃない? だってこの雪の中、空飛んできたんでしょー? こたつ、奮発して買っといてよかったわよね」

「そうかそうか。まずはあったまっていってくれ、サンタさん」

「……っ」


 現在の状況はこうだ。1DKの中央に鎮座する小せえこたつの中に、恰幅のいい真っ赤な服のじいさんがひとり収まっている。その左右の辺には、ピンク髪の女と目を輝かせた金髪の大男。具沢山の鍋料理を挟んだ向かいの辺にも、やたらご機嫌麗しい大男が座っている。


 布団の中では全員の足が誰かの膝や腿にぶつかっていて、もはやヒーターが必要ないくらい暑い。誰か切れよおい。


「サンタさんは、お酒飲みますか? あ、お仕事あるなら、ジュースのほうがいいでしょうか。自分、とってきますね!」


 ぱたぱたと小さなキッチンへ駆けていく弟分を横目に、オレはひげの中から仲間たちに鋭い声を飛ばす。


「おい! こんなの計画にねェぞ!? プレゼント渡して、すぐ去るって話だったろうが」

「いやすまん。まさかガルシがサンタを食事に呼びたいと考えていたとは予測してなくてな。しばらく付き合ってくれ」

「あの子の張り切りようを裏切るつもり? 見なさいよ、あれ」


 キティリアの真っ赤な爪に促され、オレは部屋の隅にあるキッチンを見る。そこにあるのは、ジュースのペットボトルをシンクの上に並べて真剣に吟味している弟分の姿だ。ついでにコンロの上の大鍋の中身も掻き回している。


「おい、鍋のあとにまだあんなメニューがあんのか」

「朝から煮込んでるビーフシチュー?って言ってたっけ? ぜんぶ『サンタさん』に振る舞うためよ。残さず食べなさい」


 オレがげんなりした顔をすると同時、りんごジュースのボトルを持ったガルシが戻ってくる。オレにグラスを渡し、サッとボトルを構えた。どうやらお酌してくれるらしい。こいつがこんな作法を知っていたとはな、とオレは少し驚いた。


「えっと、たしか……『サンタさん、いい波のってんね〜』」

「あーガルシくん。そんなこと言わなくていいから普通に注ぎなさい」

「す、すみません。いろいろ、この世界のこと、勉強しているのですが」


 やはりテレビやネットは悪影響なのではないかとオレが目を回しそうになっている間に、全員の飲み物が用意される。乾杯をした後、オレはすかさずガルシに声をかけた。このままずるずると食事を始めるとタイミングが掴めなくなりそうだ。それにこの魔力の薄い世界じゃ、わずかに術のボロが出る可能性もあるしな。


「さて、ガルシくん。キミは今日、何が欲しいのかな?」

「えっ。ここで、言うんですか。サンタさんは、欲しいものがわかるって……。お願いの手紙、ツリーの下に」

「あー、こ、今回からルールが変わったんだ。本人と希望商品の確認を、あらためて各ご家庭で行うことになったんだよ。ほら、誤配や残業配達も多かったから」

「そう、なんですか……」


 まずい、純真な弟分だがさすがにこれは不審だったか。金髪の下にあるタレ目が、どこか不安げに泳いでいる。メラゴが助け舟を出した。


「サンタさんも忙しいんだ。食事はタッパーに詰めて、持っていってもらったらいい。さあ希望を言ってくれ、ガルシ」

「そうよ、ガル。心配しなくても、サンタさんはこの袋の中からあんたの好きなものなんでも出してくれるって話よ。魔族もびっくりだわね?」


 キティリアも話を盛り、オレの後ろにある(毛布を詰めただけの)白い大袋をポンポンと叩く。ガルシの希望を訊いたあとすぐ、キティリアが幻影物質でそのプレゼントを袋内に生成する手筈だ。そして用事があると言って出かけている『アスイール』が欲しいものを実際に購入し、ガルシの見ていないところで本物にすり替える。物質はあくまでよくできた幻に過ぎないからな。


 まさに完璧すぎる作戦──のはずだった。弟分がその悲しそうな顔を見せるまでは。


「すみません。自分……やっぱり、プレゼントはいいです」

「「「えええ!?」」」


 初対面のはずのじじいの声までぴたりと揃ったことには気づかず、ガルシは悲鳴を上げたオレたちを見まわした。


「皆とサンタさんは、ゆっくりしていてください。自分は、外にいきます」

「どうしたのよ、ガル!? あんた、いつも外は怖がって出ないじゃない」


 仰天しつつ、キティリアが弟分の太い腕に手を置いて引き止める。仲間の言う通りだった。魔界でも命令時以外は部屋に引きこもっていたガルシは当然、この異世界にもまだ馴染めずにいる。さらにこの国じゃ目立つ巨体だ、注目は避けられない。


 なのに今日の弟分は、決意を固めた顔をして言った。


「……アスの帰りが、おそすぎます」

「!」

「夕方、お仕事のことで出かけていく時……すぐに戻るって、言ったのに。きっと──きっと、『ブラックサンタ』に襲われたんです!」

「ぶ、ブラックサンタ?」


 なんだソイツは。こっそりスマホで検索するかとも思ったが、時間が惜しいらしい様子のガルシがそのまま説明してくれる。


「悪い子のところへ来るサンタさんです! いらないものをプレゼントしたり、大事な人を連れていくって」

「へえ、興味深い存在だな。だが、どうしてそんなヤツがアスイールを襲うと思うんだ? この街にだって、人間はたくさんいるだろう」


 いつもと同じ落ち着いた笑みを浮かべるメラゴを見て、ガルシは半分浮かしていた腰を畳の上にすとんと下ろした。普段は適当なことばかり言っているがさすがオレたちのアタマを張る男、こういう時は頼りになる。


「……から……」

「なんだ?」


 しかしうつむいた大男がぼそりと発した『理由』は、魔族の耳でも拾えないくらいか細い声だった。キティリアに背中を優しく叩かれ、弟分はふたたび絞り出すように言う。


「自分が……。『いい子』でもないのに、願い事を……した、から」


 鍋の中で具材がぐつぐつと煮えていく音だけが、部屋に満ちる。ガルシはジャージに包まれた自分の腕を強く掴み、続けた。


「自分は、たくさん……『遠いところ』で、悪いことを、してきました。サンタさんには、言えないくらい……この街のだれよりも、ひどい、ことを」

「ガルシ。あんた、またそんなこと」


 キティリアがピンク色の眉を寄せたが、ガルシの顔色は蒼白なままだった。


「この世界にきたって……自分たちがやってきたこと、消えたわけじゃないです。だから自分が『クリスマス』をしたいなんて、思うべきじゃなかった」

「……なあ、ガル。お前の手紙、見せてもらってもいいか?」


 いつもの直感とやらが働いたのか、メラゴがそんなことを言い出す。ガルシは目を真っ赤にしたまま、力なくこくりとうなずいた。鬼は後ろに身体を反らし、狭い部屋の隅を占拠するクリスマスツリー──その下に置かれている小さな手紙を手に取る。


「いい手紙だな」


 小洒落た封筒も、厳かな封蝋もない。それでも駅前の手配りチラシを丁寧に折って作られたその手紙を開き、メラゴは静かな声で読み上げた。


『特売予告。卵Mサイズ、九十九円。ご家庭につき一パックかぎり──』

「あっ、そ、その裏です、メラゴ」

「ああ、すまん。こっちか」


 黄色いチラシを裏返し、ようやく目的の一文を見つけたらしい。鬼は紅い目を細め、文面をオレたちに見えるように広げた。


『クリスマスごはんを サタさんと してんうの みんなで たべたいです ガルシ』

「……」


 練習中のいびつな字が訴えるその願いを見、オレは長い長いため息をついた。どう受け取ったのか、ガルシはこちらを縋るように見て叫ぶ。


「お、お願いをやめることは、できますか!? アスを……自分の家族を、返してください! プレゼントもなにも、いりませんから」

「……お前は本当に、それでいいのかよ? 欲しいモン、いくらでもあるだろうが。長らくこの家の経済状況は最悪だったが、最近じゃそうでもな」

「いいんです!」


 サンタの口調の変化にも気づかず、ガルシはいたいけな老人の赤い服を掴んで前後に揺さぶる。


「なにもいらない! メラゴとキティ、そしてアスが──みんながいてくれたら、自分はそれだけでいいんですっ! わがままを言って、本当にごめんなさい。でも、でもっ──」

「うるせェ、離せ。老人は大事にしろと教えただろ」

「はっ! す、すみません」


 慌ててオレから飛び退き、ガルシは恐々と赤い訪問者を見つめる。オレは老人のつぶらな瞳で、左右にいる『計画』の協力者たちを見た。メラゴは腕組みしてうなずき、キティリアは苦笑して肩をすくめている。


「はー……。ンだよ、この茶番はよ」


 身体を薄く覆う魔力を解除し、塗り替えていく。膨らんでいたじじいの身体が輪郭を失い、見慣れたシャツ姿のサラリーマンへと戻る。


「──ブラックサンタだぁ? 本気でオレがそんな雑魚そうな変質者にやられると思ってんのか、ガルシ」

「あ……アスっ!?」


 弟分は限界まで目を丸くし、やがて泣きそうな顔でこちらにダイブしてきた。オレは百キロ越えの巨体を避けるためこたつから退避しようとしたが、鬼と蝶女がいつの間にか足をがっしりとホールドしていて身動きができなかった。


「アス、アスイールっ!! よかった、よかったですっ!! ブラックサンタを返り討ちにしたんですね! さすがですっ」

「ぐあああ、待っ、ガル、内臓が」

「なるほど、サンタクロースは身を挺してガルシの願いを叶えてくれたんだな! これで一件落着だ」

「すごいヤツね、サンタって! さ、仕切り直してお鍋食べましょ。うちのかわいい弟分の一番の『お願い』、叶えてあげなくっちゃね♡」

「てめえらああああ」





「──そこからサンタクロースの『真実』に自分で気づくまでの数年、ガルは熱心なサンタ信者になっちまってな。毎年十二月になるとそわそわしまくるのなんのって」

「のわああああ!! ストップ、ストップでござるううううーッ」


 オレの思い出語りを全力で遮ったのは、アニメオタクと化した現在の弟分だ。顔を真っ赤にしつつ、隣の席の恋人──兼、オレたち四天王の現『主』を見る。


「む、昔の話でござる! 真剣に聞かずとも良いですからな、カノン殿!」

「ううん、しっかり聞いちゃった。かわいいガルくんと、この世界ではじめてのクリスマスのお話」

「NOOOOOO」


 あの時と同じようにこたつで鍋を囲む面々は、そう変わっちゃいない。鍋の大きさが増し、器の数が少し増えただけだ。それでも全員がこたつに入ろうとするもんだから、布団の中は押し合いへし合い状態は悪化したが。


「あーほんとあの頃のガル、かっわいかったわねえ! その少し後に、ぽよぽよのうるさいアニヲタになっちゃうのが残念だわぁ」

「痛烈ぅ」

「昔というが、まだ数年前の話だぞ? ガルシ、どうなんだ。まだサンタのことを待っているのか」

「いやリーダー……。さすがに拙者も、この世界のことはもう十分承知しているでござるよ。そろそろ子供扱いはご免被りたく」


 大真面目に訊くメラゴに対し、弟分は苦笑して頬を掻いた。そこからまた話が広がっていく。


「子供といえば、こんな話もあるぞ。まだガルシが魔王城に来たばかりの頃、いつも夜になると──」

「おわあああ待つでござる! み、皆して純真なヲタクの純情を弄ぶなどッ! そこに人の心はないのでござるか!?」

「ないわねー、魔族だし?」

「……あの、アスさん」


 オレの隣の辺を陣取る現魔王が、騒動の中でこっそりと声を投げてくる。ビールを口元へ持っていこうとしていた手を止め、オレは主を見た。


「アスさんも、昔のガルくんを懐かしく思うことがあるんですか?」

「あー……まあそりゃ、たまにはな」


 馬鹿騒ぎの中央で、姉貴分に首をホールドされている弟分を見る。


「けど、アイツは今年の──あんたがいるクリスマスが、一番楽しそうだ」

「そうなんですか?」

「ああ。どんなに善行を積もうがオレたち魔族の元にゃ、やっぱり本物のサンタクロースってヤツはやってこねえだろう」


 残業帰りのスラックスに包まれた足を、狭いこたつの中で組み直す。膝の左右がもれなく、誰かのどこかにゴツンとぶつかる。蒸し暑いこたつ布団を挟んだ天板の上でグラスを傾け、オレはキンと冷えたビールを喉に流し込んだ。



「だがまあ──この窮屈さも、悪かねェよ」




あの頃のMerryChristmas ─完─



***

近況ノート(漫画風挿絵つき):

https://kakuyomu.jp/users/fumitobun/news/822139841864329396

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【本編完結】拙者と推しと、ラブソング。 文遠ぶん @fumitobun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ