第3話





翌朝、十郎は妙に早く目が覚めた。ぼんやりとした頭で、ふと昨夜のことを思い出す。机の上のノート――そして、自分が書いた「明日の朝、目覚めると部屋に1000円札が一枚落ちている」という一文。


「......そんなことあるわけないよな。」


半ば冷笑しながら床に目をやった瞬間、十郎の動きが止まる。


そこには――確かに、1000円札が一枚、きちんと折りたたまれた状態で落ちていた。


「......マジで?」


慌てて拾い上げ、光に透かしてみる。紛れもなく本物だった。しかも、見覚えのない新しい札だ。


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その日、十郎は学校の授業中もほとんど集中できなかった。頭の中ではあのノートのことばかり考えていた。


「書いたことが現実になる」

そのルールが、本当に成立するのだとしたら――。


「いや、まさかな...。きっと誰かの悪戯だ...。」


自分にそう言い聞かせるものの、内心では興奮と不安が入り混じる。次は何を書くべきなのか。もっと大きなことを試すべきなのか。それとも、これ以上深入りしない方がいいのか。


帰宅すると、ノートが机の上にそのまま置かれているのが目に入った。触れてもいないのに、まるでこちらを見ているような存在感がある。


「......もう少しだけ試してみよう。」


十郎はノートを開き、再びペンを取った。そして、少し迷いながらも、次のように書き込んだ。


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「明日の朝、目覚めると自分の成績が学年1位になっている。」


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翌朝、学校に着いた十郎は、教室のざわめきに気づいた。どうやら朝のHRで、全校生徒の中間テストの順位が配布されたらしい。


「佐藤、お前......マジでこれ見たのか?」


クラスメートの一人が信じられない表情で順位表を差し出した。十郎は半信半疑でそれを受け取り、自分の名前を探した。


そこには確かに――**「佐藤十郎 1位」**の文字が印刷されていた。


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書いたことが全て本物になるノートを手に入れましたこれで最強? 星野果穂 @hoshinokaho

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