第6話 自称IQ53万が導き出した解決策

「もしかしなくても、狙われてるの僕たちの孤児院?」


 記載されている内容が、自分たちの孤児院の特徴と合致している。


「ていうか、あの人たち凄い人だとは思っていたけど、騎士団長と大魔法使いって、どこかの物語かよ」


 衝撃の新事実発覚である。


「まあ、そのことは後にするとして、どうやってあの要塞を攻略して攫うつもりなんだ?」


 脱出の時にも言ったが、あの結界は実質最強の結界だ。それが3重になっている。


 その上で、あの結界は自動反撃出来る上、何かあったら即連絡が行く。


 連絡が行けば、すぐにシスター達が帰ってくるはずだ。


 攻略など不可能に等しい。


「狙うなら、もっとやり易いものがあっただろうに、意外と馬鹿なのかな」


 そうして僕は、続きを読む。


「孤児院を選定した理由としては、生贄には10歳以下の子供が要求されること。

 再誕した災厄の子に騎士団長と大魔法使いをぶつけて殺害、遺体を回収して更なる厄災への進化に活用するため」


(なるほど、これならギャンブルになるが勝ったときのメリットは大きいね)


 相手側の切り札であろう災厄の子は、強いと言えば強いかもしれないが、国を相手に出来ほどではないのだろう。


 ある程度暴れて、シスター達などに討伐されるのがオチといったところか。


 それならば、子供達を餌にシスター達だけを呼び出して、災厄の子で不意打ちすれば、勝てるかもしれない。


 さらに、その死体で災厄の子を強化ができれば、早期解決は不可能になり、有利な盤面を作ることができる。


 シスター達に負ける、逃げられるとかなり不味いことになるが、子供達を誘拐したことで、シスターや守り手の性格からして、逃げないので半分の可能性は潰せている。


 十分に勝算があるギャンブルだ。


(まあ、誘拐できたらの話だけどね)


 僕は続きを読む。


「誘拐に関して、今回計画に賛同してくれた外部組織の支援もあり、試作段階であるがテレポーテーションのスクロールを確保することができた。


 また、外部組織の工作もあり、2人は不在になっている為、我らが師と精鋭部隊で誘拐を実行する。」


 僕は、一切の迷いなく即座に孤児院に転移する。


(殺す、誘拐される前に必ず殺す)


 ここで誘拐されると大事になる。


 それは、非常に不味い。


 僕の最強道はスタートラインに立っていないのだ。


 まだ、表舞台には姿を現すわけにはいかないのだ。


 残虐非道な実験をしていた奴らだ。ある日突然死体になっていても不思議ではない。


 悪魔に呪い殺された感じに、始末すれば問題ないだろう。


 一瞬にして抹殺計画を立てたが、一歩遅く孤児院には誰もいなくなっていた。


「マジか」


 今日に限ってニアミスするとか運無さすぎ。


 僕が居合わせれば皆殺しにして、戦争の首謀者は死亡。戦争終了だったのに。


「運がいいやつめ、命拾いしたな」


 僕はゆっくりと座り込む。


 ここで慌てるのは二流、世の中大抵何とかなるルートがあることを僕は知っている。


 まずは冷静に状況を精査する。


 僕において、現在の目標は如何に穏便にことを解決するかだ。


 まずは明里達、生贄はすぐには殺されないだろう。


 囮として使う必要があるからな。


 それならば救い出せるチャンスはあるが、相手拠点の場所が分からない。


 たとえ場所が分かったとしても、変身した姿で助けに行くのはやめたい。


 絶望の中、全てを打ち消し救いに現れる最強を見たら、脳が焼かれるのは必定。


 救い出した後に、永遠と変身後の僕の姿について語られるのは色々と辛いものがある。


 他にも子供達を救い主犯を倒した人物を国は全力で探すだろうし、不本意な形でのデビューにもなってしまう。


 それは最強道に反している。


 つまり、僕は敵拠点を探し出し、隠れ蓑となる存在と共に救出に向かう必要がある。


 さらに言うなら、明里達がどこに監禁されているのかも重要だ。


 すぐに生贄にする、もしくは目の前で囮にできるように連れ出す場合、穏便に救い出すのは不可能だ。


 その場合は、変身する必要がどうしても出てくる。


 できれば、それは避けたい。


 何か見落としていないか、明里達がどのような状況であるか推測できる情報がないのか。


 そうして、僕は目を瞑り静かに思考する。


 テレポーテーションのデメリット、襲撃の方法、敵拠点の様子、作戦内容・・・・・・なるほど、運は僕をまだ見離していないようだ。


 すぐに動けば、明里達をまだ穏便に救い出せるはずだ。


 そうなれば重要なのは、拠点の位置と隠れ蓑だ。


 しばしの思考をした後、僕は転移で結界の外に出ると、周囲を探す。


 そしてとあるものを見つける。


(やはり、信じてたよ)


 これで拠点問題は解決する。完璧な位置までは分からないが、敵にバレない程度の探知魔法の範囲までは絞り込めるはずだ。


 そうなると最後に重要になるのは隠れ蓑だ。


 隠れ蓑としては、シスターと守り手の人が最適だ。


 しかしながら、呼ぶ手段がない。


 携帯なんてあるわけでもないし、頑張って誰かに借りれたとしても、電話をしてしまえば、結界の通知なく外にいることがバレ、転移で移動している方が分かってしまう。


「・・・・・・うん?いや、呼ぶ手段あるじゃん!」


 いつもはバレずに抜け出すことばかり考えていたこともあって、気がつくのが遅くなってしまった。


(これなら救える、流石僕、IQ53万のスペックは伊達ではない)


 冷静に考え始めて僅か数分で、助ける為の手段を思いつくことが出来た。


 流石は僕だ。


 そうして僕は、明里達救出作成を開始するのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る