―――― 


「リタフォ!ミリタフも一緒に来たのね!」

「おやつだからね。子供たちも連れてきた。そこに座らせるね」

 とリタフォは屋台近くのテーブルへ、子供たちを誘導し、着席させる。

 

「エデノで、キャラメルフレーバーが食べられるなんて思ってもみなかったな」

とは、ミリタフ。

「でも、子供たちが先だからね。……って、ミリタフもキャラメルのポップコーンは知ってるの?なぜ作ってくれなかったの?」

「ん~。売ってるのは見たことあったし、食べたこともあるけど、自分で作るにはちょっと手間がかかるんだよね。ただ加熱させて、塩かけるのとは違ってさ。カラメルを作らなきゃだから……」

 と、言いながらも、ミリタフは目の前の作業をじっと見つめる。

「でも……え?これだけでいいものなんだ?」

 ミリタフは驚いて、レイ・グレコに問いかける。

「そうですね。水と砂糖、それにちょっとした工夫があれば、特別な材料がなくても作れますよ」

「へぇ~今度やってみようかな。じゃあメイペス。オレはリタフォのところに行くね。これ、持っていってもいいぶんかな?」

 そう言うと、ミリタフは幾つかのフレーバーのポップコーンを持って、リタフォと子供たちの待つテーブルへと向かった。


「ねぇ?レイ・グレコ。ミリタフは材料と、レイ・グレコを見て作るって、言ったわよね?私には分からないんだけど?」

「何が?」

 レイ・グレコは、メイペスをちらとも見ずに出来上がったポップコーンにストロベリージャムを散らしている。

「見ていれば、作れるようになるものなの?」

 

「どうせ見るならこっちから見ればいいんじゃないか」

 ぬおっとグラスコ・グレコが、芋を齧りながら現れる。

「それっ…」

 みんなのおやつじゃない、と言おうとしたが、グラスコ・グレコは玉蜀黍を持ってくれたり、この焜炉を用意してくれて、それがエデノの仕事とは異なるけれど、働いてくれたことを思い出す。

 

「……これか?子供たちがくれたぞ。ポップコーンのお礼だと。自分たちはポップコーンがあるから、どうぞだと。レイノシュ食うか?」

「後で手を加えますから、置いておいてください」

「お芋も…変わるの?」

 返事の代わりに、ふっーと息を吐いてレイ・グレコはグラスコ・グレコに視線を送る。

「いいからこっち来い」

 と、グラスコ・グレコが手招きをする。


 レイ・グレコの横に並ばされたけれど、何をしていいか分からない。

 その時、ミリタフと同じ頃に新来者になった女性が二人、屋台の前に並んだ。

「あの、メイペスさん。ポップコーン、私たちも少し分けていただいてもいいかしら」

「あ、でもこれは…」

 言い淀むメイペスを遮って、レイ・グレコが答える。

「あまり量はないけど構わない?ホントに少ししかないけど」

「勿論です!おやつはあるから欲張りかとも思うんですけど、でも甘いおやつにはどうしても引かれてしまって」

「ええ、ここでまた、お塩以外のフレーバーのポップコーンが食べられるなんて思わなかったので」

「二人で分けて」

 と、レイ・グレコは器に、茶色と赤と青の三種類のポップコーンを入れて渡した。

「いいんですか!わぁ、キャラメルとストロベリーとブルーベリー!ありがとうございます!……えっと、お芋を分ければいいの?」

 と、二人の女性はグラスコ・グレコを見ながら言う。

「……いや、いいから。持っていって」


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