7
「何であげたの?」
「あったから」
「これは、子供たちの…」
メイペスは混乱している。
「子供たちはもう食べてる。でも、余ってる。なら、食べたいやつが食べればいい」
グラスコ・グレコが口を挟む。
「そもそも、こんな公衆の面前でやってるんだから、ダメっていうのもおかしくないか?」
「……でも、決まりが…」
依然、不満が表情から見て取れる。
「あー。もう。メイペス、こっち向け」
と、グラスコ・グレコに言われ、顔を上げると、口の中に甘いものを入れられた。
「…なっ!」
「生キャラメルって言うんだ。余ったものでレイノシュが作ってくれた。ポップコーンでもない。口にしたからには、メイペスも同罪だな」
いつもの若気た顔とは、どこか違うグラスコ・グレコの表情。
メイペスは、ほたほたと涙を溢し始めた。
「…………私の知ってるキャラメルと違う。とろとろ……美味しい…」
ほんの少し真面目だったグラスコ・グレコの顔が柔らかく笑う。
「だろ?美味しいは分け合うもんだ。今日足らなくてもいいじゃないか。明日、また作ればいい。レイノシュが」
「三千人分なんて無理ですよ。力は有り余ってるんですから、あなたがやって下さい」
「おう。飴造りなんて、力仕事だもんな」
と、がははと声を上げて笑っている。
「ねぇ?エデノの外は争いばかりじゃないの?人を傷つけて、こんな美味しいものがあるの?」
乱暴に涙を拭いながら、メイペスが言う。
「ねえ…?外は怖いところじゃないの?」
「怖いかと言われたら…」
「怖いですね。つい何日か前まで、この人がスプラッタだったのは、君も知ってるでしょう?」
メイペスは、レイ・グレコがグラスコ・グレコを背負ってきた時を思い出した。
「子供を脅すな、レイノシュ」
「そうですよ、夕飯前に片付けをしてしまいましょう」
「あ、アンスタウト…私…子供なの?」
アンスタウトは、真顔になって
でも、
「もっと、色々知ってもいいと思いますよ」
そう、ふわっと笑う、アンスタウト。
「ん、分かった。子供たちだって、お礼にってお芋を分けてたんだもんね、じゃあ、私は……私は……」
「何をしてくれるんだ?」
グラスコ・グレコが、期待に満ちた目でメイペスの目を覗き込んでいる。
「あ!そうだ!子作りを教えて上げる!グラスコ・グレコ!あなた!知らないのでしょう!」
グラスコ・グレコのぽかんとした顔を見て、メイペスは、良い提案が出来たと満足していたら、途端、弾けるようにアンスタウトとレイ・グレコが、大声で笑い出して……
私、変なこと言ってないよね?とメイペスは思った。
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カヲルノヒズミル譚 砂生 @narlel-00
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