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―――
「パートロを探してきてくれませんか?」
厨房前まで来てアンスタウトが言う。
腕の中から、アンスタウトに引き取られる玉蜀黍を眺めながら、「ああ」とメイペスは納得している。
私は厨房には入れない。
それは「決まり」。
「分かった!」
と、元気よくメイペスは駆け出した。
――
「ここにも、彼女に見せられないモノがあるってことか?」
アンスタウトがメイペスから引き取った玉蜀黍を、更に自分の腕に納めながらグラスコが訊ねる。
「さすがですね。その通りです」
苦笑を浮かべ、空っぽになった手を見ながらのアンスタウトの返答。
「まあな」
しかし、メイペスは厨房に入れないのを分かっていて、どう玉蜀黍を調理する気だったのだろう。
部屋で調理する術はないだろうに。
「本当に、数日待つつもりだったのかも知れませんね」
またしても顔色を読まれたらしいグラスコは、
「気の長いこって」
と、学教室の方へ走って行くメイペスの後ろ姿を見て、目を細めた。
「さ、メイペスが戻ってくる前に準備をしましょう。お祭り用の火元で、事は足りますよね?レ…イノシュ」
「見てみないと分からないけど…」
「祭りがあるのか?!」
レイノシュが言い終わる前に、グラスコが食い気味に体を乗り出す。
言葉を遮られたレイノシュは、又か…と呆れた表情を浮かべ、「こんなやつなんです」と、アンスタウトへ無言で訴える。
目を丸くしたアンスタウトは、表情を緩めると、
「何て言うか…貴方とメイペスは良く似ていますね」
と、くすくすと笑う。
「あん?あそこまで、お子ちゃまか?」
口を尖らせるグラスコに、空かさずレイノシュが続ける。
「そう言うところですよ。全く、どこが獅子なんだか。猫アレルギーのくせに」
「アレルギーは関係ない!」
と、そっぽを向くが両手には玉蜀黍を抱えていて、何とも滑稽に見える。
「さ、メイペスが戻ってくる前に、やることをやってしまいましょう。その間にお話しします」
アンスタウトに押し込まれるように、厨房へと入った。
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