第三話〈39人の同級生。それと自己紹介〉

縁は争いのタネを撒いてすぐに、教室を出た。

そして、去り際に。

「ああ。一応此処で長く過ごす事になるだろう。」

「自己紹介ぐらいは、はじめにやっておけよ〜」

と、言っていた。


自己紹介。

多くのものが嫌いとする恒例行事だろう。

はじめに自己紹介しだしたのは、さっき入ってきたウルフカットの男。


「俺は、槙嶋まきしま ゆう。天才側の人間だ。」


槙嶋 遊。聞いた事はない名前だな。

どんな天才なんだ?


「俺はオールラウダー。つまりは、器用の天才。」

「他の奴がどんな奴か知らないが、俺がいれば勝つのは必然だ」


なるほど。

こいつは、はじめに死ぬな。

俺はそう思った。

とりあえずは、彼の自己紹介を皮切りに他の者が紹介し終わるのを待とう。


30分ほどたっただろうか。

ありきたりな俺の自己紹介が終わると同時だ。


「あー。あー。聞こえてるな。お馴染み、縁先生だ」

「お前達に、肝心な事を伝え忘れていた。」

「お前達には、不定期にとあるミッションをしてもらう」

「そして、全てのミッションが協力を前提のものになっている」

「だから、お前達は普段は疑い、互いを探りつつ。」

「時には、協力して苦難を超えてもらう」


ふざけているな。

探り合えだの、協力しろだの。

言動が全て矛盾しているじゃないか。

こいつは何をしたいんだ?


「で。早速だが、ミッションだ」


「第一ミッション。『自己紹介伝言ゲーム』」

「ルールは簡単。名前のままだ。」

「互いに自己紹介をしたよな。その内容を私が入った扉に1番近い席。」

「そこに座ってるから後ろに伝えていき、最後に扉の斜め後ろその対角線の席まで自己自己する」

「ただし、伝えるのは自分じゃない。他人の自己紹介だ。」

「教える事や、共有する事。全てOK」

「ただし、このゲームには破ってはならない3つの誓約がある」

「1つ、伝えれる自己紹介は今お前達がいる教室内でのものに限る」

「1つ、ミッション中での自己紹介は禁止とする」

「そして、最後の1つは……」


「最後に伝えられたものは、私に自己紹介を伝えろ。」

「クリア出来ない。又、誓約を破った場合には、ランダムに天才が1人死ぬ」


「以上がルールだ。」

「がんばれよ。生徒諸君」


飛んだゴミゲーだな。

あまりにも不利すぎるだろ。

生徒は40人。全ての者が自己紹介をした今、最後の席。

つまりは、俺の席まで回ってくるだろう。

ただ、そこで必ず俺は詰む。

なんせ、此処には40人しかいないのだから。

このゲームの最もの落とし穴。それは……


「“41回“の自己紹介。か」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る