第22話
そしてその数日後に、私はすごすごとハチに手を引かれ王宮へとやってきている。
一体どんな手を使ったのかとハチに詰め寄ったが「別に? 提案してみただけだよ」とあっさりかわされてしまった。
大きな大きな王宮の、煌びやかな装飾を前にして震え上がる。足を踏み入れた瞬間に首を飛ばされたりしないだろうかと心配になるくらい場違いな感じがした。
なのにハチは堂々と、というか飄々としているせいか王宮にいてもあまり違和感が無く、足取りも軽いように思う。
大きな門扉の両側で、2人の兵士が厳めしい顔つきで立ちはだかった。
ハチがその人たちに名前を告げ、何やら懐からバッジを取りだした。
「これ、ユウの」
と王宮のマークの同じ文様のバッジを手渡される。裏側に私の名前が刻印されていることを確認すると、胸元につけるようにと促された。
「ハチ様、ユウ様ですね、王子がお待ちです。このまま真っ直ぐ王宮に入っていただければ、案内人がいますので」
といった感じであっさり入れた。
ユウも住み込みで働くんだよと言われたのを真に受けて、すごすごとついてきたものの、心のどこかで本当に王宮に入れるのか? と疑っていた節があったのだ。
そうしていざ王宮に足を踏み入れることができるのだとわかると、途端に現実味を帯びてきた。つまり、私はここで働くということになるのだなと。
「私の仕事ってなんだろう」
そんな疑問を口にして初めて、自分が何も考えずにここにきてしまったことに気づいた。
「……メイド」小さい声でハチが言った。
「うん?……メイド?」
「そう。俺付きのメイド………って打診したけどあいつ考えもせず却下してきた。
だから、普通のメイド」
そりゃあそうだろう。
「なんでだよ。あんまりユウ会えなかったらただじゃおかないからな、あのクソ王子」
ハチは不満が服を着て歩いているような顔つきで案内人の姿を探していた。
彼は本当に自分のメイドにできると考えていたらしく、案内人の姿が見えるまでずっとぶつぶつ独り言を漏らしていた。こういうところはとても子供っぽいなと微笑ましくなる。
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