第9話

秋。

木の葉が紅に染まり、落ちていく時期。

時の流れとは残酷なもので、愛羅に会ってからもう、半年も経ってしまった。


そして、三大青春イベントである、文化祭。

その前の準備やら会議やらをしていた。


「今回の議題は、今回の文化祭では何をやるかです。参考までにメイド喫茶、お化け屋敷などはお金と時間の問題で無理です」


とクラス委員長が言う。

すると、すぐにブーイングが起こってしまった。


「どういう事だー!」


「俺らは愛羅様のメイド姿が見たかったのに!」


「それが無理ならお化け姿で昇天したかったのに!」


「不可能を可能に変えるのが俺達だろうが!」


無理な事を言うんじゃねぇよ…。

相変わらず愛羅の人気が凄いなぁ…。

尊敬する。


「あ、あの、お、おち、落ち着いて…」


お前が落ち着け。

それでもクラス委員長か。


「落ち着いてられるかぁ!」


「ひぃ!」


お前らも落ち着け。クラス委員長がお困りだろ。


そうやって心の中でツッコミを入れながら俺はアイツらを落ち着かせる最強の手札を引いた。


ドロー!


「愛羅、ちょっと耳を貸せ」


「えっ?そういうやつ?」


「違う。いいから」


「んっ」


(自然に、お化け屋敷とメイド喫茶が嫌な事を言うんだ大声で)


「あっ、これ結構ゾクゾクする」


「お前聞いてたか」


「ごめん、もう1回」


「やらないよ」


「じゃあ、言ったらやってくれる?」


「かもな。1%の確率で」


「それでも!私は信じたい!」


「何をだよ」


某ロボットアニメのセリフオマージュしないでもらっていいですかね


「あぁー。私、お化け屋敷とメイド喫茶あまり好きじゃないからなぁー。男子達がいやらしい目線で見てくるからなぁ〜」


すっげぇ棒読み!

お前、それ本当に大丈夫なのか!?


「よし、委員長話を進めてくれ」


「まぁ、メイド喫茶とお化け屋敷以外にも方法はあるもんな」


「女の願いを叶える為なら、男の夢は捨て去るしかないもんな」


いい事言ってるんだけど、ものすごくかっこ悪いなぁ。


すぐに収まったので、愛羅の言うとうりに耳元で礼を言う。

(ありがとな)


「…録音していい?」


「ダメに決まってるだろ」


やんなきゃよかった。


「それで、皆さんは何をやりたいですか?なるべく低予算で時間のかからないものが良いのですが…」


「そんなの無理だろ…」


嘆くのもわかる。

文化祭と言えばのテンプレが無くなってしまった今、中々出せるものは無い。

それに他の学年やクラスとは被りたくは無い。

かつ、皆がやれるような簡単であり、簡単過ぎない物。


「はぁ…」


無理だ。

分からない。

何も思い浮かばない


「そういえば、このクラスの男子が麻雀持ってきていたような…」


「それだ」


麻雀だけではなく、他のギャンブルも入れれば、被らないし、面白いし、何より簡単な奴もあるので、クラス全員が参加出来る。


「よし、そうと決まれば、麻雀と、あとは…チンチロもやれるな」


「トランプで何か出来ないかな…」


「え、えぇっと、み、皆さんはそれでいいんですか?」


「まぁ、それ以外に無いしな」


「その他に考えれる奴がやってくれ」


「俺達は熱いギャンブルがしたいんだ!」


「な、なら、それで行きましょう準備などは、各自役割を決めてください…」


「よし、やるぞお前らァァァ!」


「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!」」」


「…」


「…」


「…」


うわぁ、女子達が冷たい目で見てる…。

絶対的に、「勝手に決めんなよ…」

みたな感じなんだろうな…。

でも、女子よ。意見を出さず、決まった事に反論しなかったのも悪いと思うぞ。


まぁ、俺もギャンブルとかは嫌だけど、他に無いし、あったとしてもここで言おうという気持ちにはならないな。


「全く…、本当にバカしかいないんだな」


心葉が呟くように言う。


「まぁ、そのバカのおかげで、文化祭がぶち壊れないでいるんだから」


「納得がいかない…」


頭を抑えている心葉を横目に、愛羅のに話しかけようとするが、


「まーじゃん?ちんちろ?」


当然の反応をしていた。

まぁ、まだ大学生だからそういうの分からないだろうな。


…ちなみに俺はパチンコ行ったことある。

やばかったぜ。脳汁がドバドバだったぜ。


「取り敢えず、準備するか!」


とイケメン君が言う。


イケメン君。お前はクラス委員長になった方がいい。それが例え表の顔で裏の顔がヤバいとしてもお前はクラスを束ねられる。


「じゃあ、麻雀持ってる人は、持ってきて!僕は先生に、持ち込みを許してもらうよう言っておくよ」


うわぁ、めっちゃイケメン…。


「なぁ、愛羅。もし俺があんな風になったらどう思う」


「気持ち悪いと思う」


「そうですか」


つまり俺は似合わないってことね。


「私は、ありのままの柚葉君が好きだから」


「さいで」


「…お前ら付き合って無いんだよな?」


「何を言っておるんじゃ心葉君よ。俺が好かれる事なんて無いだろう?」


「もちろん私以外にね」


「おい、お前も含まれてるんだぞ」


「あっ、そうなんだ。じゃあ、分からせてあげないとね」


「ひぃっ!」


愛羅が獲物を狙う獣みたいな顔してる!

いや、もうこの顔は獲物を狙う獣の顔だよ!


「…俺は攻めの方が好きかな」


「そう。なら、待ってるから」


ギリギリセーフ!あっぶねぇ!もう少しで食われそうだった…。


「お前、男受けの○○漫画持ってたよな」


「心葉ぁ!何やっとんじゃぁ!」



「「「「…」」」」


クラスメイト達がびっくりした顔でこちらを見てくる。

そういえば、今は授業中だった。


「あっ、すみません」


すると、愛羅が話しかけてきた


「…柚葉君」


「…なんでしょう?」


「嘘つきはどうなるか…分かってるよね?」


「いや、本当に、違うんです」


「放課後、私の家来ようか?」


「ひぃっ!助けてくれぇ、心葉ぁ」


「すまないな。私は忙しいんだ」


「心葉ぁ…!」


そうして、放課後。


「えへへ…。食べてあげるね」


「なぁぁぁぁぁぁ!」


その後、どうなったかは想像に任せる。



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