第34話 得をするのは誰なのか
一夜明けて、陸の元に「
「偉い人たちの会議じゃないですか……昨日のニュース番組でやってた話と関係あるんでしょうか」
「そうかもしれないけど、
不安げな
「何か言われたら、俺たちが、君には何ら非が無いことを証言するからな」
「頑張れよ」
陸も、ここでの正装とも言える戦闘服を着て、「
特別棟の入り口には、
陸が来るのを待っていた様子だ。
真理奈は普段の白衣姿ではなく「怪戦」幹部の制服、
「二人とも、やはり司令に呼ばれたんですか」
陸が問うと、
「はい。……
「とはいえ、色々と面倒なことになっているらしいですね」
真理奈が、小さく息をついた。
陸たち三人は、特別棟に入り、指定先の「特別会議室」へ向かった。
ノックの後、会議室の扉を開けると、幹部と思われる者の幾人かが既に着席し、時折、何やら
その中には、術師の装束をまとった者も三人ばかりいた。
老人と言って差し支えないであろう、長く伸ばした真っ白い髪が印象的な高齢の男性が一人と、中年の男女――おそらく、術師の中でも高位の者たちなのだろう。
「失礼します」
陸は会釈しながら、真理奈と
「おお、
陸たちの姿を認めた高齢の術師は席を立ち、
「
「
「
「
陸が挨拶すると、ヤクモも音声を使って名乗った。
その様子を見た幹部たちの間から、小さく、おお、と声が上がる。
「話には聞いていたが、まるで腹話術だな」
幹部の一人が言った。
「いや、この者の中には、たしかに本人以外の存在がある……人間とは全く異なるが、
その時、出入り口の扉が開いて、護衛と秘書らしき男たちと共に
「すまない、呼び出しておいて、待たせてしまったな」
陸たちも案内された席に座ったのを確認すると、
「今回、集まってもらった理由については分かっている者も多いと思うが、少々面倒なことになっている。問題の一つは、現在『使い魔』として扱われている『コードネーム・ヤクモ』についてだ」
その言葉で、会議室に集まっている者たちの視線が、一瞬自分に向けられるのを、陸は感じた。
「彼は、いわば不幸な事故によって『怪異』と融合した状態になった訳だが、人間としての自我が保たれており、我々も彼の協力により多大な恩恵を得ていることは、皆も御存知のことと思う。ただ、こういった事例は前例が無く、混乱を避ける為に外部への公表を控えてきたことで、現在、説明責任を問われるという事態になっている」
と、幹部の一人が挙手した。
「『ヤクモ』は、既に、ある程度の実績を積んでおり、安全性への疑問についてはクリアされていると考えられます。情報公開しても問題ない段階へ来ているのでは」
「私も、それには同意だ。『ヤクモ』については近く会見を開き、ある程度の情報公開をしようと考えている。もちろん、
「もう一つは、民自党の総裁選絡みだ。候補者の一人である
「それについてですが、少々風向きが怪しくなっている気配があります」
挙手した幹部の一人が言った。
「『怪戦』解体論と、先の説明責任問題を一緒くたにして、『怪戦は信用ならないし、税金の無駄なのでなくすべき』『民営化すべき』といったプロパガンダを行っている者がいます。単なる承認欲求から閲覧数による収益狙いまで、こういったセンセーショナルな文言に乗っかって騒ぐ者は常に存在しますが、大手のSNS上では、かなり大きな話題として取り上げられている模様です」
「実は、民自党総裁選の候補の一人である
彼の言葉に、会議室が小さく
「そんな実績もない候補に乗っかるなど、命知らずだな」
「カネでも積まれたのか」
「たしかに
「誰かの援助があれば、あるいは……バレれば収賄罪だが」
「金を積まれたとしても、明らかに力の足りないものに国を任せたりすれば、自分にも、しっぺ返しがあるだろうに」
「あ、あの……」
陸は、思わず挙手した。
「
「
「
陸の言葉が終わると、ヤクモの声が響いた。
「ほほう、一連の動きは『怪異案件』の可能性もあるということじゃな」
術師長の
「SNS上の、著しく事実と乖離した、誹謗中傷にあたる文言については、業務妨害を理由に情報開示を請求してよろしいかと思います。見つかるのは末端の雇われた者だけかもしれませんが」
真理奈も、声を上げた。
「そうだな。『怪異案件』も視野に入れて、
「哨戒中の隊員がN区に大型怪異の出現を確認、現在、警察と協力し周辺住民の避難誘導を敢行中、『
陸は、無意識のうちに立ち上がっていた。
「久々の出番なのである」
ヤクモの声に、数人の幹部たちが難色を示した。
「現在の状況で、彼を出撃させるのは……」
「何かあれば
陸も一瞬迷ったものの、思い切って口を開いた。
「でも、ヤクモの力があれば、助けられる人が増えます!」
「N区といえば、次に行こうと思っていた『ラーメン屋』がある場所なのである。壊されては困るのである」
ヤクモも、行く気満々の様子だ。
一瞬考える様子を見せていた
「君のことは、私の首を賭けてでも守る! 君は、現場の住民たちを守ってくれ」
「では、我々は司令の首が飛ばない為の対策も協議せねばならんな」
「了解です!」
陸が答えると、
「私も行きますよ。
「二人とも、気を付けて」
真理奈の心配そうな目に見送られ、陸と
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