第23話 受け継ぐ思い
「……知っている、とは言っても、私の推測も入ってしまうのだが。話さない訳にもいかないね」
「先ほど言ったように、君のご両親である
初めて聞く、自分の両親についての話――技術者とは聞いていたが、彼らが「
「神代ご夫妻は、お二人で幾つもの優れた業績を遺された。今、主に利用されている技術にも、お二人が開発した理論を
陸は、固唾を飲んで話の続きを待った。
「表向きは、自動車の運転ミスによる単独事故ということになっているが、事故現場は見通しの良い直線道路で、神代先輩は安全運転を心がける方だったし、何故そんな事故が起きたのか、私は釈然としなかった。何より、亡くなる直前、君の父上は私に『身辺に危険が迫っているかもしれない』と仰っていた」
「
陸は、震える声で問うた。
「実際は何の証拠もないし、『疑っている』としか言えない……しかし、君を母方の祖父母に預けたのは、お二人が身の危険を感じていた為と考えれば、辻褄が合うと思わないか」
あまりに情報量が多かった。
「お二人が亡くなる直前に開発していたのは、認識阻害や光学迷彩その他の特殊能力で姿を隠している『怪異』を発見する為のシステムだった。彼らは優れた記憶力の持ち主で、研究内容の多くは、その脳内に記憶されていたようだが、それが
「――俺、両親は忙しい人たちだったと聞いていて、だから、俺のことが邪魔になって祖父母に預けたんじゃないかと思っていたんです。祖父母も、両親のことは話したがらなかったし……」
「それだけは、ないと断言するよ」
陸の言葉に、
「お二人は、いつも幼い君の写真を持ち歩いていてね。私も、何度も見せていただいたよ。ご両親にとって、君は宝物……大切だったからこそ、離れる選択をしたのだと思う」
その言葉で、陸の涙腺は限界を迎えた。熱を持った両目から涙がこぼれるのを、彼は抑えきれなかった。
「……知らなかったからといっても、俺、両親について、何となく悪く思っていたところがあって……爺ちゃんと婆ちゃんは、俺を悲しませない為に何も言わなかったのかもしれないけど……どうして、もっと知ろうとしなかったんだろう……」
両親は、我が子を愛していたのだと、だからこそ、自分にも両親に抱いていた愛情だけは記憶に残っていたのだと、陸は理解した。
俯いて肩を震わせている陸を、
「君のご両親と、ご祖父母は、君が『怪異』などに深くかかわらない人生を歩んで欲しかったのかもしれない。しかし、こんな形で君が『
「でも、両親は、人々を守る為の技術を開発していたということですよね。結果論ではあるけど、俺も、形は違っても、両親と同じ道に立っているんだって考えたら、少し落ち着きました」
陸は、顔を上げて言った。
「君は、強いな。私も、君のことを、自分の力の及ぶ限り守るつもりだ。尊敬していた先輩と同期生の忘れ形見だからね。今日は、それを言いたくて、ここに来たんだ」
そう言って、
「ここの頭目よ、
不意に、ヤクモの声が響いた。
「これが、『ヤクモ』の声かい? ……了解だ。そして、君にも、共に人々を守るのに協力をお願いしたい」
「ふむ、よかろう」
「すみません、ヤクモは、いつも、こんな感じなので……」
「なに、『怪異』でありながら平和に意思疎通できるんだ、彼は素晴らしいよ」
「そうであろう? ありがたく思うがよい」
しかし、気付けば涙も乾いている。
――マイペースだとばかり思っていたけど、もしかして彼なりに気を遣って……? いや、まさかね……
いつしか
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